答えだけ知ろうとするのもよくないけれど、
無駄な失敗を重ねる必要もない

和田 だから、「答え」だけ先に教えてもらおうとするのですよね。佐々木さんのように、気が遠くなるほどのアウトプットを繰り返して、上司に怒られたりしながら失敗を重ねないと、「なぜ失敗したのか」を考えないわけです。失敗にヒントが隠されていることって多々あるじゃないですか。たとえば、100個書いたコピーのうち1個しか選ばれなかったというのは、99個がゴミになった可能性もあるということですよね。

佐々木 可能性じゃなくて確実に、「ゴミ」です。

和田 そう。その積み上げをせずに、成功を欲しがる人が多いと思うのです。

佐々木 そうそう、そうなんですよね。世の中にマニュアルみたいなものがすごく増えたから、失敗せずにまあまあなところまでいけてしまう。失敗しにくい時代になったといいますか。

和田 無難な人が増えてしまったのですよね。

佐々木 ただそれに対して僕が思うのは、この本の意図は僕と同じ失敗をあえて繰り返す必要もないのかなということで。方法論がわかれば、無駄な失敗を重ねなくても済むのではないかと……。僕はコピーライターを19年続けてきて、毎日コピーを書き続けています。一般の人に同じことをしてもらうのは到底無理ですし、その必要もありません。だけど、僕が積み上げてきたマグロでいうと大トロの部分を、本を通して知ることができて、「伝え方」の技術が進化してくれれば、やっぱり最高に嬉しいですよ。本は伝承されるものだから、伝承によって人類がどんどん進化していく、という意味でね。

和田 うんうん。それでいうと、私が書いた『成約率98%の秘訣』も、“答え”をお教えするから「つまずくことなく、最速で成功してね」ということですものね。結局本を書いている著者は、ぜんぶ答えを出しています。

佐々木 人は日々進化しています。日本で女性に参政権が与えられたのはわずか70年前のことだし、アメリカだって、150年前には奴隷がいたわけで。つまり、いいことも悪いこともたくさんあるけれど、それでも人類は前に進んでいて、どんどん良くなっていると思うのです。だからこそ、人の役にたつコンテンツがあれば、喜んで提供していいと思っています。それが僕でいうと「伝え方」だったということ。

和田 なるほど。

佐々木 一般の人が、プロのコピーライターになる必要はありません。料理と同じで、主婦がプロの料理人になる必要ないけど、プロの出汁の取り方を簡単に教えてくれたら、家庭の料理は格段においしくなりますよね。そういうことを「伝え方」のレシピで僕はやり続けたいと思っています。