「あれも大事、これも大事」と悩むのではなく、「何が本質なのか?」を考え抜く。そして、本当に大切な1%に100%集中する。シンプルに考えなければ、何も成し遂げることはできない――。LINE(株)CEO退任後、ゼロから新事業「C CHANNEL」を立ち上げた森川亮氏は、何を考え、何をしてきたのか?本連載では、待望の初著作『シンプルに考える』(ダイヤモンド社)から、森川氏の仕事術のエッセンスをご紹介します。

経営理念を文書化することに「本質的な意味」はあるか?

 「御社の経営理念を明文化しませんか?」

 コンサルタントの方に、こう勧められたことがあります。
 会社を経営していくうえで、経営理念は非常に大切です。
「会社は何のために存在するのか?」「何のために経営するのか?」「会社の行動規範は何か?」。こうした経営の基本がしっかりと定まっていなければ、誤った判断や行動をしてしまう。そして、会社を危機に陥れるからです。そこで、その作業に取り掛かることにしました。

 しかし、すぐに虚しくなりました。
 経営理念を明文化することに、本質的な意味があるとは思えなくなったからです。

 まず第一に、いまの会社にとって正しい理念であっても、時代の変化にそぐわなくなったり、現実からかけ離れたものになってしまう恐れがあります。もちろん、そのときには理念を適切に書き換えればいいのかもしれませんが、その作業をやっている間に時代に取り残されてしまうことになりかねません。特にインターネット業界は変化が激しいですから、そのようなリスクをあえておかすべきではないと思うのです。

 もちろん、LINE株式会社に経営理念がないわけではありません。
 経営陣から社員まで一人ひとりが、「ユーザーが本当に求めているものを提供する」「社会を豊かにする」「サービスでユーザーを幸せにする」などといった想いをもって仕事をしています。
 いわば、これがLINE株式会社の理念。それが、日々の仕事のなかに生きているのならば、わざわざ明文化する必要はないのではないでしょうか?