期待と不安が相半ば、といったところか。

 3月25日(英国現地時間)、製薬大手エーザイが20カ国以上で国際共同治験を進めている新薬、「エリトラン」の中間解析結果が明らかになる。

  エリトランは「重症敗血症」の治療薬。「重症敗血症」は、細菌の感染により正常な免疫機能が低下して、ショック症状や多臓器不全を引き起こし、場合によっては死亡する可能性もある。救急医療などで高いニーズがありながら、これまで重症敗血症には効き目の良い薬が乏しかった。 そのため発売すれば「3000億円以上を売り上げるブロックバスター(大型薬)にバケる可能性が高い」(外資系証券アナリスト)とみられている。

  中間解析の結果、有効性や安全性などが確認されれば、6月にも日米欧で承認申請することが確定し、発売に向けた大きな一歩となる。しかし、クリアできない場合は、今後500症例を積み増し、計2000症例のデータを改めて解析することになり、「申請は今年の暮れ以降にずれ込み、業績には痛手だ」(同社幹部)。

 半年ぐらいの遅れか、と侮ることなかれ。

  エーザイでは、ほかの製薬大手と同じく、 “2010年問題”(大型薬の特許切れによる大幅減収)を抱えている。3000億円以上の売上高を誇る主力薬の認知症治療薬「アリセプト」が、今年11月の米国を手始めに、販売する各国で特許切れを迎えるからだ。

一般的に医療用医薬品は、特許が切れると後発薬に浸食され、売上高が一気に7割以上減るとされている。連結売上高8030億円(09年度見込み)の同社にとって、約4割を占めるアリセプトの減収を補う新薬確保は、まさに喫緊の課題なのだ。

 同じく期待を寄せる抗がん剤「エリブリン」は、3月中にも日米欧で同時申請の見通しがたっているなど、内藤春男・エーザイ社長は「2010年問題への備えは打った」と自信をみせる。ただし、エリトランの潜在成長性は、エリブリンや他の新薬候補とは比較にならないほど大きい。

 中間解析の結果が振るわず、申請時期が延びることになれば、一時的にせよエーザイの売上高は大きく減る。今のところエリトランの中間解析結果の見通しは「5分5分」(前同幹部)と見られており、緊張感漂う3月25日となりそうである。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 柴田むつみ)