本来は「男心と秋の空」だった!?

 次は「女心と秋の空」です。女性の恋心や感情、趣味趣向が頻繁に移ろいやすいことを、変わりやすい秋の空模様とかけている表現です。

 でも、もともとは逆でした。明治になるまで「女心と」という表現は一般的ではなく、「男心と秋の空」が中心だったのです。

 室町時代の狂言『墨塗』には「男心と秋の空」という台詞があるそうですが、なんとその2つは「一夜にして七度変わる」というのです。他にも「男の心と河の瀬は一夜にかはる」なんて表現も。なんだか散々な言われようです。

 かと思えば、かの小林一茶自身、変りやすい自分の心を秋の空にたとえて「恥じやおれが心と秋の空」と詠んでいます。そんなもんでしょうか……。

 ところが、これが明治の頃から変わってきます。AllAbout「暮らしの歳時記」から引用します。

 “明治時代の尾崎紅葉の小説『三人妻』に「男心と秋の空」がでてきますが、「欧羅巴の諺に女心と冬日和といえり」と続きます。おそらくこれは、イギリスの「A woman's mind and winter wind change often」(女心と冬の風)ということわざのことで、強風や弱風に変化しやすい冬の風を女心にたとえたもの。”

 欧米の慣用句に多い「女心の移ろいやすさ(*6)」を紹介しているのですが、ここで対句となっているのは、冬の風、であって秋の空ではありません。女心を秋の空に見立てた慣用句は海外に見当たらないようなので、そこの部分は日本の創作なのでしょう。

 この「女心と秋の空」は、大正デモクラシー以降、一般的にも使われるようになっていきます。ただこれが単純に「女性の地位向上」や「道徳観の変化」の故なのか、はわかりません。そこにはどんな真実が潜んでいるのでしょうか?

*6 「風と女と運は月のように変わりやすい」(スペイン)、「移ろいやすいもの3つ ─ 女、風、富」(ヒンディー語)、「女と天気ほど変わりやすいものはない」(ルーマニア)など。