米倉 日本製品はコモディティになるには値段が高すぎる、と言えるでしょう。だからこそ、この中途半端な状況を変えるためにも、「アフリカ」なんです。良い意味でも悪い意味でも、誰も日本企業に対する先入観を持っていない。そのアフリカでブランドを確立できれば、あるいはアフリカでコモディティを確立できれば、世界に通用することができるのです。

あえて、「アフリカから攻める」という発想

米倉 いま日本の人口は1億2700万人で、ここから徐々に減っていくと言われています。つまり日本のマーケットだけでは、日本が持つ生産力を生かすことができない。グローバルマーケットに出ざるを得ないというわけです。だからもうASEANやインドはマスト。もっと言えばアフリカもマストです。

森辺 消費財メーカーなど、少子高齢化の影響をもろに受ける業界はとくに、成長著しいアジア新興国への早期、かつ徹底した市場参入が求められています。しかし、私から見て、日本企業のアジア新興国展開の最大の弱点は、「チャネル力の弱さ」にあります。P&Gやユニリーバ、ネスレなどの先進グローバル企業と比較して、日本企業のチャネル力の弱さは顕著です。新興国市場の大半が、パパママストア的な伝統小売で占められているなか、流通チェーンストアといった近代小売にしかチャネルを持っていない。チャネル構築への投資をしてこなかったからこそ、そもそも伝統小売に見合う、商品の現地適合化や開発も遅れています。おそらく、チャネル投資という面では、先進グローバル企業と比較して10年から20年は遅れているでしょう。

 この遅れはアジアに限らず、アフリカを含む他の新興国への展開にも大きな影響を及ぼします。いやむしろ、ASEANが終わったら、次はメコン経済圏、そしてインド、最後にアフリカという段階的プロセスを踏んでいては、その遅れはさらに広がるばかりです。だからこそ、アフリカを含めて、新興国への展開は、“世界同時多発的に”行うべきかもしれません。なぜなら新興国においては、いかなる国、地域でも、チャネル構築のノウハウには共通点が多いからです。共通点が多いということは、そのノウハウは国を越えて共有化できるというメリットがあります。

 また、チャネル構築は一日にして成らず、です。強固なチャネル構築は、僕らのようなチャネル構築の専門会社でも数年の時間を要します。ASEAN、インドでの成功を待っていたら、アフリカの市場は完全に他社に取られてしまうでしょう。昨今、先進グローバル企業だけでなく、中国や韓国企業のアフリカ進出は日本企業よりも先行しています。「まだ、アフリカは時期尚早」ではなく、いまのうちからアフリカに挑戦する日本企業がもっと増えてほしいですね。

米倉 「1個1個つぶしていく」という日本古来の積み上げ式のやり方、それでは世界のスピードに付いていけません。まずは一番高いところに登ってみて、山裾の広さをきちんと見渡してから、最も良いルートや登り方を考える、ということ。その意味で、アフリカは新興国ビジネスの頂点とも言うべき面白さがあります。

森辺 アフリカを見ることによって、ASEANでいま何をやるべきか、また、グローバル市場全体で何に優先順位を置き、何に投資を集中させなければいけないのか、も見えてきます。木ばかりを見ずに森を見よ、ということですね。

米倉 そうです。偉そうに言えば、ASEAN、インドはまだ林。アフリカまで行ってやっと森。そこに行ってやっと全体像が見えてくる、と言えるでしょう。