創続総合研究所

遺言の中身を誤ると、アンハッピーな相続になる
~遺産を渡したくない相手にも、「遺留分」はあるのです

親子でどこまで話し合えるか

八木 ただ、遺留分に配慮はしたとしていても、それでもやっぱり揉めて、感情的なしこりが解消できなくなってしまうことって、珍しくないですよね。「なんで私の取り分は、こんなに少ないの?」と。

古川 揉めない相続のためには、しっかりした遺言書が必要。でも、それだけでは不十分だ、ということだと思うのですよ。大事なのは、相続について親子で腹を割って話し合っておくことです。

八木 子どもたちも、親が亡くなって、突然遺言書を見せられたら、困惑してしまう。

古川 そういうことです。今回のケースで言えば、高齢の親や無職の長男が三女夫婦に具体的にどんなふうに世話になっていたのか、といったことが長女や次女サイドに正しく伝わっていれば、彼女たちの「感情」もだいぶ違ったのではないでしょうか。そんな話も交えながら、親の率直な気持ち、財産の状況などを説明していたら、僅かな財産をめぐって、あそこまでいがみ合うことにはならなかったかもしれません。
 私は、逆に「えっ、これだけの金額で納得なさるんですか?」という相続にも、出会ったことがあるんですよ。

八木 どんな事例でしょう?

古川 お母さんが兄妹に1億円超の財産を残して亡くなったのですが、遺言書に記された妹さんの取り分は、僅か数百万円。完全に遺留分を侵害しますけど、妹さんは、「それでいい」と。実は、先にお父さんが亡くなった時に、長男は家業を受け継いでいました。同時に、妹さんはちょっとした土地の相続を受けていた。「私はそれで十分。兄は経営者としていろいろ大変だろうから……」と、母親の遺産相続は「放棄」したのでした。
 お父さんの相続も含めて、こうした合意形成の中心になったのは、お母さん。自ら会社経営の経験のある方でしたが、見事な差配だと感心させられたものです。

八木 親族間の相続の話し合いは、被相続人のイニシアチブが大事なんだ、とあらためて感じさせるお話ですね。

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八木美代子 [株式会社ビスカス代表取締役]

早稲田大学卒業後、リクルート入社。1995年に株式会社ビスカスを設立。税理士を無料でご紹介するビジネスモデルを日本で初めて立ち上げ、現在まで10万件以上のマッチングを実現。相続に強い税理士のみを集めたサイト「相続財産センター」を運営し、相続コーディネーターとしても業界ナンバーワンの実績を誇る。著書に『相続の現場55例』(ダイヤモンド社)、『相続、いくらかかる?』(日経BP社)、『相続は『感情のもつれ』を解決すればお金の問題もうまくいく』(サンマーク出版)などがある。
株式会社ビスカス

 


相続の現場~争いから学ぶハッピー相続術

相続の別名は、「争続」。仲の良かった兄弟姉妹が親の遺産を前に骨肉の争いを演じるというのは小説やテレビドラマの中だけの出来事ではないようです。諍いの中心はもちろん「お金」。ですが兄弟姉妹には、他人がうかがい知ることのできない「本音」「思い」があるようで……奥底にある「心の綾」を解きほぐすと争いから一転、分かりあえるのが家族。そうした「ハッピー相続」の例を解説します。

「相続の現場~争いから学ぶハッピー相続術」

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