売上が順調に伸びている時にも
“罠”が待ち構えていた!

 昔は株式会社を設立するには1000万円以上の資本金を積まなければいけなかったから、一定のハードルがあったのだが、今は1円から起業できるから皆、気安くなってしまった。そこにリスクがある。

 その一線を越えてしまった瞬間に、降りかかってくる責任とコストがあるからだ。

 たとえば会社にした以上、決算をしなければいけない。これは結構大変で手間暇がかかる。個人事業主も申告は必要だが、レベルが違う。社会保険労務士や税理士ないし公認会計士などの助けを借りる必要も出てくるだろう。こうなると顧問料が必要になる。もちろん、全部自分で行うこともできるが、そこに時間がとられることによって生じる機会損失まで考えているだろうか?

 さて、そうした覚悟を決めて会社組織とし、人も雇いオフィスも借りて、頑張って売上を上げていく。その結果、幸いにも結構順調に規模が拡大すると、次の罠が待ち構えている。それは、分不相応な高コスト体質になるという罠だ。

 恥ずかしながら、私もこの罠にはまってしまった。私の場合は隠れメタボのような高コスト体質病に、10年近くをかけてじわじわ蝕まれてしまった。気づけばいつの間にか、破綻寸前まで病は重くなっていた。これは本当に他山の石として見習ってほしいことだ。

 結局私は自分の売上を自分の収入だと、どこかで勘違いしていたし、固定費の重さを軽視していたのだ。

 どうせ税金を払わなくてはいけないのだからと、無駄な経費をずいぶん使った。これは必ずしも私の話ではないが、よくあるパターンは人の雇い過ぎ、給与の払い過ぎ、身の丈を超えた立地の立派なオフィス、無駄な設備投資、いらない車、その他接待費や交通費などの使い過ぎなどなど。

 さらに危険なのが、預金残高が当面あると、調子に乗って、請われるままに、「いいよ、いいよ」とお金を出してしまうものなのだ。いっぱしの実業家気取りだ。私もそうだった。儲け話にだまされたわけではない。多額の投資をするわけでもない。一つ一つは決して大きな額ではない。一件当たりでいうなら、50万から100万、多くても200万くらいの金額だ。それを投資や融資という形で友人、知人にばらまいてしまったのだ。

 こうした投資ごっこのお金はその多くは返ってこない。投資はもちろん、融資ですらそうだ。

 私は何も起業を思いとどまらせようとしているわけではない。自分で事業を興すということは、自分の夢を叶えるための最短の道だ。束縛から逃れ、自由とやりがいを得られる道でもある。

 さらに、株式会社にするメリットももちろんある。初年度はだめでも、2年、3年と堅実に経営をすれば信用がついてくるので、たとえば資金調達もしやすくなる。優秀な人材も集めやすくなる。だから、本気で拡大をしたいのであれば、その一線を越えるべきなのだ。

 ただし、これだけはわかってほしい。起業にはやはり覚悟と計算が必要なのだということを。