トヨタが敵わない
メルセデスのビジネス戦略

 新型「プリウス」がどんなに優れたクルマであっても、フランクフルトショーの主役はやはり今年もメルセデスだった。

 会場全体で合計11のホールと複数の特設施設があったが、ホール2は今回もメルセデス専用の館となった。1階のフロアは小型車スマートのスペースで、中二階に設けられた扉をくぐると、メインステージから縦方向3フロア分をぶち抜いた巨大な空間が出現。見学者はエスカレーターで最上階に誘導され、そこからメインステージに向かって各フロアを見て回る。これはシュトゥットガルトにあるダイムラー本社のメルセデス博物館と同じシステムだ。

 このような導線を歩くことで、我々メディア関係者ですら「メルセデスワールド」に引き込まれてしまう。筆者は長年に渡り、メルセデスを肌感覚で見てきた。シュトゥットガルト周辺のメルセデス関連施設、メルセデスに製品を納入するドイツ大手の自動車部品企業、さらにドイツ各地のメルセデス関連アフターマーケット事業者等、多角的に同社と接してきた。また、筆者自身の愛車遍歴のなかでも、メルセデスとの関わりは長い。

 そうした経験を踏まえて、メルセデスの強みを3つの領域に分類し解析してみたい。

フランクフルトショーのホール2、吹き抜けのメルセデスブース。壇上には新型Sクラスクーペ等 Photo by Kenji Momota

エコカー対応では
意外にもフレキシブルな姿勢

 1800年代後半、ガソリンエンジン車を世に送り出して以来、いつの時代でも「ベンツ」または「メルセデス」は世界最高の高級車ブランドとして君臨してきた。その舞台裏ではシーメンス、ボッシュ、マーレー等のドイツ部品メーカーが技術面で下支えをし、そこにメルセデス本社のデザインとマーケティングが密接に融合してきた。

 そうしたなか、日本を含む世界の自動車メーカーの多くが、メルセデスを「ベンチマーク」と称し、市販車を分解調査するリバースエンジニアリングによって自社製品の研究開発を行ってきた。

 クルマの分類である「車格」について、メルセデスは90年代から、Cクラス・Eクラス・Sクラスという、コンパクト・ミドル・ラージという基本系を確立。これにライバルBMWを筆頭とする欧州高級車メーカーやレクサス、インフィニティ、アキュラという日系プレミアムも追従した。この辺りまでは、メルセデスは旧来型の自動車産業構造で対応してきたと思う。