もうまもなく開幕する上海万博だが、現地メディアの報道はなぜか弱々しい。いつもの派手さが感じられず、却ってそれが不自然に感じる。宣伝やスローガンはお得意なはずだが、一体あの自信はどこへ行ってしまったのだろうか。
「万博の精彩を犠牲にしても生活への影響が少ない方がいい」――。4月1日の「東方早報」は、開幕30日を前にして記者会見を行った上海万博の執行委員会主任・モ瘰ウ声氏(*)の発言をそのまま引用してこんな見出しをつけた。
(*)上海市委員会書記でもある。
タブロイド判2ページのボリュームで同氏の発言が掲載されたが、見て取れるのは、今彼が置かれている“非常に苦しい立場”だ。
記者団の関心は当然、会場内外の建設の進捗に向けられたのだが、それについて同氏はこう回答した。
「開幕前に完成できないとは聞いていない、問題があるとすれば各パビリオンの進度ではないか」、「上海の真実の姿は万博会場だけではない、完全無欠の上海で開催することなどありえない、真実の上海には先進的一面もあれば困難や問題も存在する」。
計画通りに進んでいないことに由来する、苦渋に満ちた発言とも読み取れる。
愛知万博の4時間待ちを例に
「日本に学べ」と覚悟を要求
また、市民にはこんなアナウンスを送っている。
「来場者はとにかく並ばなければならない。入館はVIPや外国の賓客、スポンサー関係者、地方からの代表団が優先されることは理解してほしい」。
「行ったところで大混雑」であることは誰の目にも明白だ。ある意味、来場者の忍耐力とルールの遵守が試される万博会場だが、お決まりの「並ばない、割り込む、そして言い争い」に発展することは想像に難くない。
市民が我慢の限界を超え、場内で混乱をもたらすことを想定したのだろう、同氏は「愛知万博での4時間待ち」を例に挙げ、その秩序を崩さなかった日本に学ぶべき、と市民に覚悟を要求した。