「地震」と「台風」は連動している!?

編集 断言されますか!?

広瀬 はい。去る8月28日(金)に東京駅前の八重洲ブックセンター本店での『東京が壊滅する日』出版記念講演会(→くわしくは、本連載第20回21回22回)では、時間がなくて話せなかったのですが、最近頻発している台風と大地震が連動しているのです。

編集 台風と大地震が連動!?

広瀬 大地震を起こすプレートの動きを知るには、海底から噴出するマグマを測定しなければなりませんが、陸上と違って、海底ですから困難です。
 では、どうやってそれを予見できるかというと、日本に台風をもたらすのはフィリピン海ですから、そこに注目してみましょう。

 この南方の海底で、地震を起こすプレートが動いてマグマが噴出すると、当然、海水温が上がって、台風が起こりやすくなります。

 つまり、「地震が起こる前兆として、台風が増加する」という可能性が高いわけです。

編集「海水温が上がって台風が増えると、地震が起きやすくなる」ということですか?

 記録的台風が多い年は、<br />なぜ、大地震が多いのか?<br />――担当編集による著者インタビュー【前篇】

広瀬 はい。左の図を見てください。これは、1950年以降の「日本の台風上陸回数」を示したグラフですが、今から11年前の2004年に突然、トテツモナイ数の「史上最多の台風上陸数」を記録しました。

 その時、フィリピン海の海水温は、異常に高くなっていました。そこで私は、これは、太平洋プレートの激しい動きによって、海底マグマが噴出し、フィリピン海の海水温が異常に上昇したことが原因だと推測しました。その年に何が起こりましたか?

 台風シーズンの直後、2004年10月23日に、内陸直下型のマグニチュード6.8の新潟県中越地震が発生して、営業運転中の新幹線が初めて脱線し、高架の橋脚も崩壊するという激震でした。

 新潟県川口町では、2515ガルと観測史上最大の揺れを記録したのです。
 そこで、フィリピン海の海水温の異常が、日本を動かしたとすれば、さらに玉突きによって南のオーストラリア・プレートを動かすのではないかと、私は予感したのです。

 そして直感した通り年末に、2004年12月26日、インドネシアのスマトラ島で、マグニチュード9.3の大地震が起こり、巨大津波が発生して、死者・行方不明者20万人以上という大惨事をもらしたのです。

編集 そうだったのですか!

広瀬 この新潟県中越地震が起こった2004年には、新潟県や福島県~福井県にかけて7.13水害と呼ばれる豪雨による大洪水もありました。
 このように、2004年6~9月に、フィリピン海で発生して日本に上陸した台風が過去最多を記録し、2004年12月26日のスマトラ島での大地震・大津波につながったと考えてみましょう。

 もう一枚の図の「大地震と台風」を見てください。
 誰も覚えていないでしょうが、2008年5月2~3日に、サイクロン(大型台風)がミャンマーを直撃して、10万人以上の死者が出ました。

 遠いミャンマーなので日本人には関係ないと思っているでしょうが、10万人の死者は東日本大震災よりはるかに大きな災害ですよ。このサイクロンを起こした源は、今度はインド洋の海底マグマの噴出によるものです。

 そして、そのわずか10日後の2008年5月12日に、マグニチュード8.0の大地震が中国四川省を直撃して、死者・行方不明者が数万人規模で出ました。
 このサイクロンと大地震の関連を説明すると、インドは、太平洋から動いてきてユーラシア大陸に衝突して生まれた亜大陸ですから、その激突によってヒマラヤ山脈~エヴェレストができ、その一帯が激突による大きな歪みを持った四川あたりの大地震帯なのです。

 この立体地形図でわかるように、しわだらけの一帯です。今年4月にも、ネパール・チベット・中国地震が起こって、エヴェレストで雪崩が発生し、多数の死者が出ましたね。つまり2015年現在は、世界規模でプレートが動いている。

編集 大型台風(サイクロン)が起こると、大地震が起こるという構図が、アジア各地でも見られるわけですね。

広瀬 日本で東日本大震災が起こった2011年には、タイで大洪水が起こりましたね。インドシナ半島に接近する前に勢力が弱まるはずの台風がいくつも上陸して、10月に猛威を振るったのです。

編集 今年は、2015年9月10日に起きた東日本大水害(北関東・東北豪雨)で、茨城県常総市の鬼怒川が決壊しました。50年に一度という大水害です。猛烈な台風から爆弾低気圧になって、鬼怒川に寄り添う形で関東・東北を縦断しためずらしいケースでしたが、この原因は何ですか?