ウェブ空間では知識の多様性が失われていく

一方、現代というのはますます情報流入がしづらい世の中になってきている。とくにインターネットの世界では、ソーシャルメディアやレコメンド機能が発達し、個人に流れてくる情報がますます偏るようになってきているからである。

アマゾンを開けば、過去の購入履歴・閲覧履歴に基づいた商品が勧められるようになっているし、スマートフォンなどのニュースアプリでも、個人の閲覧傾向に応じて表示されるニュースがカスタマイズされる。
ツイッターのようなソーシャルメディア上を流れる情報も、個人がフォローしたアカウントのつながりを経由して伝わってくるものばかりだ。

個人の関心をうまくすくい上げる機能の利便性までを否定するつもりはないが、これらに頼りすぎていると、知識の幅や多様性はますます失われていく。知識の広がりそのものについても「バカの壁」が入り、自分がその範囲について「知らない」ということにすら気づかないようになってしまうのである。

情報流入はハイリスク・ハイリータンの投資

情報流入の目的をひと言で言えば、知識の「食わず嫌い」をなくすということである。
テレビのチャンネルにしろ、本にしろ、途中下車駅にしろ、僕たちは日常の中でいろいろなものをスキップしている。ふだん素通りしていた情報をインプットできる習慣をつくれば、あなたのアイデアの素材にはもっと広がりが出てくるはずだ。

ただし、この種の情報流入に短期的な効果を期待してはいけない。いますぐあなたのアイデアの質を高めたいのであれば、やはり発想率を引き上げることに集中したほうがいいだろう。アイデアの素材に幅を持たせたからといって、それがいますぐ成果につながるとは言えないからだ。

情報流入によるインプットは、ある種のハイリスク・ハイリターンな投資である。
こうした多様性がたまたま役立ったというサクセスストーリーばかりについ目が行ってしまうが、ほとんどはムダな知識のまま終わる情報だと思っていたほうがいいだろう。
だからこそ、情報流入は、いますぐ答えを出さなければならないような短期的な問題解決には向かない。長期的なメリットを期待しながら、日常の「習慣」の中に取り入れるのが最も合理的だろう。

拙著『あの人はなぜ、東大卒に勝てるのか』では、こうした「知識の見落とし」を防ぐための習慣・メソッドについてもいくつか紹介しておいた。気になる方はぜひご覧いただきたい。

(第18回に続く)