「我々こそ、日本で初めてできた“本物のSPA”だ」
こう語るのは新SPA(製造小売り)ブランド「イッツインターナショナル」の栗田英俊社長。SPAといえば、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングやH&Mなどの外資系ファストファッションなどが、代表格として隆盛を誇っている。そんななか、この新ブランドがファッション業界に変革をもたらしそうだ。
2010年2月19日、人気ショップがひしめく東京・原宿にイッツは旗艦店となる1号店をオープン。3月4日には池袋東武に出店を果たした。そして、3号店である代官山店を今月23日に出店したばかりだ。
イッツは、これまでにない珍しい経緯によって設立されている。中堅アパレルのフランドル、帝人ファイバー、クラボウ、住金物産、NI帝人商事、フェニックス・ホンコンの6社が共同出資することで、2009年4月に設立された。アパレルと素材メーカー、商社などが協同する異色の“SPA連合体”となっている。
その価格帯や商品は、ファストファッションのメッカである原宿に1号店を出店しながらも、他社とは一線を画している。まず、H&Mやフォーエバー21が流行ファッションを低価格で販売しているのに対して、「極限のベーシック」をコンセプトにしている。価格帯も、ニットは約5000円~9000円、アウターは1万円前後から2万円までと、外資系ファストファッションに比較するとやや高め。客層も、ファッションに敏感な若い女性をターゲットにしているのとはまるで異なる。
なぜ、ファストファッションが隆盛を誇っているいま、こうした商品展開を行なう「新SPA連合」が生まれたのだろうか。その理由を探ることによって、日本のファッション業界が抱える課題と日本で生き残るための「ものづくり」の条件を見出していこう。
なぜ“初めてのSPA”が生まれたのか
まず、SPAといえば今や珍しい業態ではない。ファストリ、ポイント、ワールドなど、代表的な企業がすぐに何社も思い浮かぶ。にもかかわらず、なぜ栗田社長は冒頭のようにイッツを「日本で初めてのSPA」と強調するのだろうか。その理由の1つは、「“本物のSPA”を1社で実現して成功することは極めて難しいため、かつて完全にそれを成し遂げた企業は存在しない」(栗田社長)ということだ。
「SPA」は、本来ならば、製造から販売まで全てのプロセスを自社でコントロールし、それによってコストカットやお客の声を反映した商品作りを可能にするビジネスモデルと言われている。