信用収縮とは、仲介者としての金融機関の機能低下などによって、必要なところにお金が回りにくくなる現象だ。バブル崩壊後の90年代後半、わが国では多額の不良債権の処理に苦しんだ銀行が、貸し渋りのスタンスを取ったこともあり、中小企業などに十分な資金が回らなくなった。それが、長期にわたる景気低迷の原因の一つになったと考えられる。信用収縮の典型的なケースだ。
サブプライム問題と信用収縮
今年8月に表面化したサブプライム問題は、元々、信用力の低い人々に貸付けた住宅ローンが焦げ付いたことから始まった。過去数年間、米国の住宅市場では価格の上昇傾向が続いたため、金融機関は、価格上昇を前提にして住宅ローンの貸出しを積極的に行なった。「住宅価格が上がるのだから、所得水準が低くても、住宅を転売すれば住宅ローンの返済は可能」とのロジックだった。こうした米国金融機関のスタンスは、80年代後半バブル期のわが国の金融機関と同じだ。米国の住宅市場も、間違いなくバブルだったのである。
しかし、住宅価格が永久に上がり続けることはありえない。昨年の年央あたりから、住宅価格に頭打ち傾向が出始め、次第に価格が下がり始めた。そうなると、無理をして貸し付けた住宅ローンは焦げ付く。“いつか来た道”の繰り返しだ。
それに伴って、住宅ローンを貸し付けた金融機関の業績は悪化する。また、米国では、沢山の住宅ローンを集めて証券化し、小口に分割された住宅ローン担保債券(RMBS=レジデンシャル・モーゲージ・バックト・セキュリティー)として、投資家に販売することが一般的だ。住宅ローンの焦げ付きが顕在化すると、そうした債券の価格は下落し、債券の保有する投資家は含み損を抱えることになる。