世界経済失速の中で
金融緩和というエンジンを止めた

 第一の注目は、量的金融緩和の軌道修正、政策変更である。

 リーマンショックは、百年に一度あるかないかの経済の落ち込みをもたらしたが、その後、株価は右肩上がりとなった。S&P500株価指数で見ると、その年の最高値を翌年には更新してきた。最高値で買っても、プラスのリターンが得られたことになる。住宅価格も上昇をみた。いわゆるQEという量的金融緩和政策の効果には疑問が呈されていたが、こうした資産価格の回復がなければ、恐慌になっていたかもしれないし、日本のように10年、20年を失っていたかもしれないであろう。

 そして、その株価の上昇は、資産購入を停止したところで一服している(図表2参照)。リーマンショック後の経済を回復させたエンジンを、Fed(連邦準備制度)が自ら止めてしまったのかもしれない。

◆図表2:量的緩和と株価指数の推移

(資料)FRB、S&Pのデータより、三菱東京UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成

 第二は、名目金利からインフレ率を差し引いた実質金利の上昇である。

 今般、IMFは2015年の世界経済の成長見通しを3.1%に下方改訂した。中立の成長率は4%とされるが、この数年4%に達していない。世界経済全体では、生産能力の遊休(スラック)があることになる。これが、商品市況を押し下げているとみられる。中国の問題ではなく、世界経済の問題と認識すべきであろう。特に原油価格は、独特の要因もあって、低位の推移となっている。

 簡便であるが、CPI全体指数のインフレ率とアトランタ連銀の産出するシャドーFF金利で実質金利を計算してみると、図表3の通り、今起きている指標の減速の動きを説明できるところがある。実質金利は、ドル高をもたらすことで、こうした減速を引き起こしていることもありえよう。

◆図表3:経済活動を抑制する実質シャドーFF金利高

(資料)FRB、アトランタ連銀、米労働省、ISMのデータより、三菱東京UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成

 中国発というよりも、世界経済全体に問題があり、その中で、米国の金融政策運営が適切であったかが問われているということであろう。