大手IT企業創業者が次々と立ち上げ
台頭する数多くの宇宙ベンチャー企業
まず注目すべきポイントは、数多くのベンチャー企業の台頭である(図表参照)。既に宇宙ビジネス業界において、ロッキード・マーティン社、ボーイング社などの世界有数の“老舗企業”と互角の競争力を持つベンチャー企業も存在する。
これらのベンチャー企業は、大手IT企業創業者や出身者によるものが多いのも特徴だ。スペースX(Space X)社はペイパル創業者イーロン・マスクが、ブルーオリジン(Blue Origin)社はアマゾン創業者ジェフ・ベゾスが、ストラトローンチ・システムズ(Stratolaunch Systems)社はマイクロソフト創業者ポール・アレンが立ち上げた。彼らは従来の宇宙ビジネスでは見られなかった、全く新しいビジネスモデル、ITで用いられている開発手法の活用、意思決定のスピード、資金調達力などを強みにして、新しい風をどんどん吹き込んでいる。
◆図表:世界の宇宙ベンチャー企業と創業者
それらのベンチャー企業は何をしようとしているのか、それに対して“老舗企業”はどのような動きを見せているのか。
まず、ロケットの分野での事例を紹介しよう。
ジェット機から打ち上げ、マイクロ波で推進──
斬新なアイデアで大幅にコストを削減
誰も発想しなかった斬新なアイデアで、ロケット打ち上げビジネス展開を狙うベンチャー企業が存在する。ヴァージン・ギャラクティック(Virgin Galactic)社とエスケイプ・ダイナミクス(Escape Dynamics)社だ。
ヴァージン・ギャラクティック社が構想する「ランチャーワン」(LauncherOne)は、輸送用のジェット航空機「ホワイトナイトツー」(WhiteKnightTwo)に搭載される、主に小型衛星に対応したロケットである。ジェット機を母機として打ち上げられるため、ロケットの射場が必要なく、その設備費・運営費などが不要である、衛星のミッションに合わせて最適な場所まで移動して打ち上げられる、天候による打ち上げ延期などが回避できる、そしてそれらによりコストが競合他社の5分の1以下の12億円程度で済む、といった様々なメリットを持つ。

出所:Virgin Galactic