「いつも刺激的なタイトルで、勘弁してよ」

 代々のゼネコン担当記者が建設業界の方々からお叱りを受けるのが、弊誌のゼネコン特集です。

 今回のタイトルも「ゼネコン落城」です。やはり、少々刺激的なタイトルになってしまいました。

 というのも、現在の建設業界の状況を見ると、どうしても暗い話題になってしまうからです。足元の状況、今年5月に終わった大手ゼネコンの決算を見ても、“業界の盟主”である鹿島が68億円の営業赤字に転落、大林組も鹿島を上回る625億円の連結赤字を計上しました。

 これは海外大型工事の損失、大林・鹿島JVで工事中の地下鉄「ドバイメトロ」(UAE)の損失計上の影響によるものです。

 国内の建設投資は、公共事業費が減るなかで1992年度の84兆円をピークに下がる一方です。建設経済研究所の予想によると、2010年度の国内建設投資は38兆5100億円で、約30年ぶりに40兆円を切る水準まで落ち込みます。

 鹿島や大林組のように「国内がダメならせめて海外で・・・・・・」と期待した海外工事もこのような結果となってしまいましたから、皮肉としか言いようがありません。

もっとも、体力のある大手なら、これを高い授業料として次回に生かすこともできるでしょう。深刻なのは、地方の中小ゼネコンです。企業再生のコンサルティング会社、VTCコンサルティングの笹雄一郎社長は「最近は無借金経営の建設会社からの相談が絶えない」と言います。

 無借金経営をするような優れた企業の経営者が、「建設業に将来はないのではないか」「会社の状態が良いうちに売りたい」などと次々に“廃業相談”に来るというのですから、驚くばかりです。

 先行きを考えると、無理もないかもしれません。事業者数と市場規模を見ると、92年の国内建設市場のピーク時に比べ、市場規模はおよそ半減していますが、事業者数はほとんど変わっておりません。市場規模に対して、事業者数が多すぎるのです。

前原誠司国土交通相も、昨年11月に報道陣に対し、「建設事業者で実際に稼働しているところは20万社程度だが、公共事業の削減に伴い、この20万社もまだまだ縮減が必要だろう」という趣旨の発言をしています。

 現実に、国や地方自治体の政策は、事業者数を減らす方向に動きつつあります。たとえば、公共工事であまりにも安い金額で落札してしまうと、建設会社は現場監督を増員したり、たくさんの提出書類が出さなくてなりません。せっかく無理して安く工事を受注したのに、さらに多大なコストがかかるとことになります。

「工事の質」を担保するというのが理由ですが、金融機関の融資を受けたいために無理やり赤字入札している会社にとっては、「死」につながりかねません。「国は建設業を潰そうとしている」という声も大げさではないのかもしれません。

 体力のない会社はふるいにかけられているのです。特に地方の公共工事が100%という中小の建設会社にとっては、そうとうに厳しい環境になりそうです。

 今回の特集では、最新の決算データを反映した上場建設会社180社の経営危険度ランキングをはじめ、海外大型プロジェクトで損失を出したスーパーゼネコンの実態と今後の状況や、地方での建設業界の実情などを分析しています。

 今後の建設業界はどうなるのか、生き残るためにはどうすべきなのか、この特集が少しでも読者の方々のお役に立てば幸いです。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 山本猛嗣)