新規ビジネスでも撤退条件を予め明確にする。
失敗するなら早くしろ

 本来、戦いには目的があり、終わりがあります。しかし、日本軍の戦いには目的が曖昧、あるいは終了条件が決まっていないものがいくつもあります。みんな撤退したいと思っているのに、人情が絡んで誰も言い出せない。前のめりの参謀を司令官がコントロールできない、司令官の暴走を大本営も止められない。そんな事例がこの本にはいっぱい出てきます。

 戦いの終了条件の曖昧さが、日本軍の致命的な大敗につながりました。ビジネスでもよくあることです。日本企業だけでなく、米国企業でも人情ゆえに引き下がれなくなるケースは少なくありません。ただ、米国にはより冷徹で強力な「株主」たちがいるので、決断できない経営者は即クビになります。

 でも日本企業の場合、株主からのプレッシャーはさほどではありません。いきおい、赤字事業に資源を逐次投入するような事態に陥りがちです。小さな失敗を大きく育てないようにするには、「撤退条件」をあらかじめ決めておくことが重要。失敗を、小さなうちにつぶしておくのです。

 今、ビジネスチャンスはあらゆるところで生まれています。経営層には、現場から数多くのアイデアが上がっていることでしょう。どのアイデアを事業化するのか、事業化したときにどのような条件で撤退を決めるのか。そのルールや仕組みづくりが問われています。

『Yコンビネーター』 ランダル・ストロス(日経BP社)2013年

 後年、『Yコンビネーター』を読んで、これかと思いました。シリコンバレーのベンチャー育成機関 Yコンビネーターは、Dropbox、Airbnb など、多くの有望企業を世に送り出したことで知られています。全米から選ばれた起業家の卵たちが数ヶ月間合宿し、最終的に投資家にプレゼンテーションをして、資金調達できなければさっさと退場してもらいます。Yコンビネーターは夢を育てる場であり、同時に早めに夢をつぶすところでもあるのです。

 明示的な関門(ゲート)があるから、不首尾に終わったとしても納得できるし、若き起業家たちは次のチャンスに向かって進むことができるのです。

「新奇」は本の選び方が命。
でも運を天や大衆や目利きに任せてみる

「非ビジネス新奇」セグメントの目的と読み方は簡単です。自分の興味分野を拡げることです。とりあえずは知らない世界を覗き見て、興味が湧くかどうかを確かめていくだけです。斜め読みで構いません。

 もともと興味のない分野の本を読むことになるので、途中でギブアップすることも多いでしょう。それは仕方ないとあきらめましょう。ただ、そうならないためにも「評価の高いヒット本」を読むのはいい手です。

 他にも、「大衆の選択眼」を信じる(=ヒット本)のではなく、「目利きの推奨」や「偉人の愛読書」を信じてみるのもいいでしょう。もちろん、運を天に任せるのもよし。 書店や図書館を彷徨って、「これ!」という直感を待つのです。1時間もうろつけば、きっと何冊かは見つかるでしょう。

■「非ビジネス新奇」の目的と読み方
【目的】拡げる。知識でなく、自分の興味の領域を拡げる
【形態】自由
【読書方法】斜め読みして、興味が出れば熟読を試みる
【読む場所】いつもと違う場所。代官山蔦屋とか
【記録方法】気に入らなかったらサヨウナラ。気に入ったら本棚に新しいジャンルのコーナーをつくる

(最終回に続く)