新規事業や社内起業は
どんな優れた企画でも邪魔される

あなたが新たな企画を成功させたいと思うなら、後ろ盾となる社内の実力者の支援を受けることが絶対に必要だ

 この連載の第8回で、「パトロン(支援者)がいない提案の成功確率は極めて低い」と述べた。パトロンが行うパトロネージュ(支援)にも、さまざまな側面がある。お墨付きを与えてくれる。社内政治についてアドバイスをもらえる。内容そのものにコミットしてくれたり、企画案の精査をしてもらえる。背面援護が期待できる。実際に企画を通してくれる。邪魔なものを排除してくれる、などだ。

 私はリクルートの新規事業担当のフェローを経験した。古巣の野村総研でも、新規事業の手伝いをしたことが多かったし、私自身、新しいコンサルティング分野(人事・組織・組織開発系)を生み出した経験もある。

 本当にさまざまな経験をした。成功した事業の影で、残念ながら頓挫した企画もあった。特に自分が若い頃のことを思い起こせば、成功要因は明らかで、その企画の内容、その新規性や会社の未来にどれだけ貢献するかといったことよりも、むしろ、しっかりとした支援者が存在したかどうかということなのだ。

 だからもしあなたが社内起業や新規事業の提案を考えるのであれば、何としても、その提案のパトロンが必要になると思ってほしい。パトロンなしの独力で成功したという話を、私はほとんど聞いたことがない。

 会社の中で何らかの新規事業を起こすということは、それがどんなに優れた企画であっても、組織の中にさざ波を起こすことになる。大きな成功であればあるほど、会社の現状の力の均衡点をずらすということにつながる。

 だとすれば、何を行うにしても、何らかの形で痛みを伴う人が出てしまうものなのだ。既存事業に対する投資額が減るとか、人員の異動が伴うとか、ある機能や組織が新たな組織などにリプレースされてしまうなど、あなた以外の人に対する負の連鎖が起こるかもしれないのだ。

 社内起業なり新規事業の提案は、給料は保証されたままの活動であるし、失敗したからと言って、自分の貯金が減るわけでもない。会社を辞めて起業するのに比べて、“安全”と言ったメリットがある分、さまざまな組織的課題をかいくぐる必要がある。

 ことによると社外で起業するよりも数倍のエネルギーが必要になる。特に大企業ほど、社内起業にはエネルギーが必要になる。この組織的課題の解決こそ、パトロンが必要になる最大の理由なのだ。