17日夕方には、法廷や廊下に落ちていた「白い粉」3点を分析した結果、「アスベストは含まれていなかった」とした上、「空気中の粉じん濃度測定」(正確には空気中の繊維状粉じんを測る「空気中の総繊維濃度測定」)でも最大で空気1リットルあたり7.5本のため、「大気汚染防止法の1リットルあたり10本以下という基準値以下だったので、安全性が確認された」と説明。週明けの21日から閉鎖を解除する方針を明らかにした。そして実際に、21日から通常通り法廷の使用を再開した。

測定中なのに「安全宣言」
腑に落ちない幕引き

東京高裁・地裁のアスベスト除去工事を知らせる掲示。「建築物の解体等の作業」と「解体」が前面に打ち出され、「アスベスト除去」であることすら明確には記載がないため、普通の人にはほとんどわからなかった

 だが、裁判所側の対応はおかしなところだらけだった。

 14日に「基準値以下」だったので「アスベストの影響はない」と判断した「簡易的な測定」だが、実際には単なる室内の粉じん量測定で、アスベストの飛散の有無や量を判別できないものだった。

 空気中の総繊維濃度測定でも「基準値以下」と強調していたが、実際には室内や一般環境で「適用できない」と環境省も認める基準と比較していた。この基準は規制の緩かった1989年にアスベスト製品をつくる工場の「敷地境界基準」として設定された。だが、アスベストの1つ・クリソタイル(白石綿)のみを対象としており、発がん性の特に高いクロシドライト(青石綿)やアモサイト(茶石綿)による曝露もあり得る解体・除去工事などを含めたリスク評価がされていない。

 実は、環境省の全国調査では、2014年度の住宅地域の全国平均は1リットルあたりわずか0.16本の総繊維濃度に過ぎない(過去5年間では同0.136本)。これと比較すると、今回の1リットルあたり7.5本という測定値は住宅地域の全国平均の46.8倍という異常な濃度となる。

 現在同省が判断基準としている施工区画境界での「管理基準」は「石綿繊維数濃度1リットルあたり1本」。裁判所側の分析結果はアスベスト以外の繊維も含む可能性のある「総繊維濃度」のため単純な比較はできないが、むしろアスベストの飛散を疑わせる測定値が出ていることになる。

 同省のマニュアルでは総繊維濃度で1本を超えた場合、より高倍率の「電子顕微鏡」などでアスベストが含まれているかを同定するよう求めているが、裁判所側は「現在分析中」(広報室)という。閉鎖解除後の12月25日段階でも分析結果は出ていなかった。