“自分が子育てを間違った”
子どもの「引きこもり」を憂うる親たち

 リーマンショック以降の雇用情勢悪化の影響で、自ら会社を辞めていく人たちや、「派遣切り」「リストラ」などに遭って「引きこもり」状態に陥る、新たな「大人の引きこもり」層が増えている。

 ハローワークに通っても「履歴書(キャリア)の空白」などがネックになり、採用につながらない。一旦、社会から離脱すると、なかなか社会に復帰できないまま、彼らは、こっそり地域の中に潜在化していく。

 年老いた両親も、賃金カットされたり、退職して年金生活に入ったりする中で、息子や娘が引きこもったまま、長期化、高年齢化していく事態に直面。収入がなく、貯金が切り崩されていくだけの家計の現実を前に、将来への絶望感が漂っている。

「日本では、風邪を引いたり、捻挫したりすれば、すぐに内科や外科へ行くのに、精神科の受診は世間体を気にして、当事者も家族もためらう。その結果、引きこもりが10年、20年と長期化してしまうのではないか。せめて、親が亡くなった後には、自分で飯を食えるような状態にしてあげたい」

 そう訴えるのは、東京都中央区で開かれる引きこもり家族会『KHJ西東京・萌の会』の井手宏会長(69歳)。

 同会は都内でも珍しい、親や兄弟らが手作りでつくる、専門家のいない「引きこもり」関係の自助グループだ。

 会場は、地下鉄日比谷線の小伝馬町駅近くにある中央区の「協同ステーション中央」。小学校の空き教室を使った部屋に、毎月第2日曜日の午後、50~60人の家族が、情報交換や親睦などのために集まる。

 また、月に1回、会報を編集し、会員向けの発送作業も自分たちで行う。初めて訪れる家族の相談に乗ったり、引きこもる当事者と雑談したりする場でもある。

「引きこもり」当事者のために、「コスモス」という“居場所”も無料で開かれる。月例会開催日、家族会が校舎内にある別の畳敷きの部屋に、お茶や菓子、ゲーム、トランプなどを用意。同じような気持ちを持った人たちや、カウンセラーの卵のような人たちも集まり、開催日の時間内であれば、気軽に自由に出入りできる。