ついに中国が「元相場の弾力化」を宣言した。その内容は予想の範囲内だが、驚くべきは報道管制。英FTの中国語サイトの人民元関連記事は本稿執筆時点(6月24日)で、ここ北京からアクセスしても開かず、中国メディアも大きく報じない。この報道規制から透けて見える人民元改革の当面の落としどころはどこにあるのか?(北京在住ジャーナリスト 陳言)

 6月26日から27日までカナダ・トロントで開催されるG20の前に、中国は2008年秋のアメリカ発の金融危機以来、事実上固定してきた為替相場を再度フロート制に戻した。

 中央銀行である中国人民銀行は、6月19日に「人民元相場の弾力化」を宣言し、21日から実施したが、その後の為替市場を見るかぎり、基準値の上下0.5%の範囲内では変動したものの、急激な元高とはならなかった。今までの経験から見て、今後5%前後までの元高もあり得ると、市場関係者のあいだでは噂されているが、それは果たしてアメリカの一部の政治家が主張している40%の切り上げ要求に十分応えるものだろうか。さらに物価がかなり上昇している中国では、インフレ退治という側面では、よりいっそうの元高を期待する向きもある。

 一方、輸出企業の利益率は数%と低く、急激な元高は輸出企業から大変な反発を受ける。また中国国内でビジネスをしている日系企業にも、急激な為替変動に対しては一様に警戒感が出ている。

 世界の生産基地であり貿易大国の中国では、人民元の動向は国内だけでなく、世界的にも注目されている。

中国経済界で人気の英FT中国語サイト
その人民元関連コンテンツが読めなくなった

 ここ北京から中国経済界やマスコミで人気のあるFT網(英国のフィナンシャル・タイムズ紙の中国語サイト)にアクセスして、人民元関連の中国語記事を読もうとしても、タイトル以外のコンテンツは一つも開けられない(本稿を執筆中の24日時点)。この状況は、筆者の知る限り、21日からのことだ。

 そもそも同サイト上には、中国人民銀行が人民元相場の弾力化の方針を明らかにした19日直後には、英字紙の翻訳記事だけでなく、明らかに中国で取材し書かれた記事も数本掲載されていた。しかし、中国の金融当局の意向と十分には一致していないためか、繰り返すが、21日以降(24日現在)すべては読めなくなっている。