実現のため政府は何をすべきか

 企業内の賃金体系の見直しは、労使の合意に基づくことが基本であり、政府はそのための条件整備が主たる役割である。まずは、同一労働同一賃金についての基本法が必要となる。この点、先の国会で成立した議員立法の「同一労働同一賃金推進法」は、その名称にもかかわらず、正社員の働き方を基本として、それとの均等待遇を目指す点で、基本的な矛盾を抱えている。

 むしろ、雇用機会均等法にある「性別にかかわる差別の禁止」の規定を、年齢も含むように拡大することが重要である。これは、欧米諸国並みの定年退職の禁止への第一歩となる。もちろん、現行の曖昧な職務概念のままで、単に定年制を廃止すれば企業の負担が大き過ぎる。このため、例えば40歳代までに何らかの職種を個人のフランチャイズとして定め、それを基本として仕事能力の評価や賃金を定める。また、そうした職種の基準に満たない場合には、雇用契約を解消するルールの策定も必要となる。解雇の金銭補償ルールは、すでに欧州諸国では確立した仕組みであり、十分な補償なしに解雇されている労働者保護のためにも必要とされる。

 また、在宅勤務や職種・地域を限定した正社員の働き方を労働法上に明示する必要がある。これは配置転換や転勤に応じる義務のない働き方であり、夫婦共働きが主流となる今後の社会では必要な選択肢となる。

 正社員・非正社員にかかわらず、同じ職種での賃金差の根拠を明確に示す立証責任を企業に課すことも必要になる。企業にとって詳細な人事評価記録を求められることは、「負担増」ではなく、今後、外国人も含めた多様な人材の活用には、社員も納得する客観的な人事評価は避けられない。

 同一労働同一賃金は、社員の身分ではなく、仕事能力にもとづく職種の差で賃金を決める公平な仕組みである。これは正社員にとって必ずしも賃下げを意味しない。むしろ仕事能力の高い職種に早期に就けば大幅な昇給も可能である。

 今後の低成長・高齢化社会では、年齢に依存した現行の人事システムは機能不全となる。同一労働同一賃金の原則を、正社員と非正社員の間だけでなく、社内の高年齢者や女性の活用にも役立てることで、初めて安倍総理の成長戦略に結びつけられる。