ムーギー・キム氏からの講評:
こうして「本嫌い」が大量に生まれている
今回の主題は、「子どもに読書習慣を身につけさせるには、とにもかくにも好きな本を与えて、活字に親しませること」というものである。我が身を振り返っても、私は「アクアライフ」という熱帯魚の雑誌や、プロレス誌「週刊プロレス」、そしてリンカーンやケネディなどアメリカ大統領の伝記という自分の関心のある本だけ好きに読んでいたので、活字に親しむ習慣がついた。
これに対し、世の中の本が国語の教科書やお堅い新聞のコラム、そしてわかりにくさを競っているかのような、入試の現代文の問題文ばかりだったら、まず本など読まない人生を過ごしたことであろう。
考えてもみれば、学校教育や入試の現代文も、もっと面白く、わかりやすく、教訓が深く、もっと活字を好きになるような内容にすべきではないか。論理性と明快さに乏しい文章に、線を引かせたり空欄を補わせたりと、本嫌いを大量生産するような、突っ込みどころ満載の国語教育が行われている気がする。
私が文部科学大臣だったら、国語政策をとっとと見直して、論理的思考を明確にするGMAT(欧米のビジネススクールの入学適性テスト)の日本語版と、日本語の伝統的な美しさに親しむ古典と俳句、そして活字を好きにするため、「とにかく好きな本もってきて、要約文をつくってプレゼンしなさい」という3種類を支柱にすることだろう。
たいしたアイデアでもないのにもったいぶった書き方のわかりにくい文章を読ませて、「筆者の意図を要約せよ」などといつまでもやっているようでは、子どもの識字率は高くても、読書率と読解力は今後も下がり続けていくことであろう。教科書で教えられる文章自体の論理が不明確だから、大人になっても論理的な文章を書けない人が多いのだ。
このような「子どもが本嫌いになりかねない学校教育」に任せることなく、わが子が本好きになるよう、好きな本を探すことを手伝い、思う存分好きな本に親しませてあげたいものである。