私自身、その昔、若者の「必読書」のようにいわれていたドストエフスキーや夏目漱石を見栄だけで読みましたが、「読んだ」というだけでそれ以上に理解が進んだり感動した記憶はありません。

 ですが、それより昔、周りに本が少なかった小学生時代に、自分から好きで「リンカーン」や「ヘレン・ケラー」「ナイチンゲール」「キュリー夫人」といった伝記を読んだときは、いつまでも感動していたものです。いまだにその内容や、そこで説かれていた正義感や死闘ともいえる努力、そしてその偉業を、はっきりと覚えているほどです。
 こうした体験からも、流行の本や家にある本を読ませるのではなく、子どもの関心に合わせて本を選び与えることが、子どもを本好きにする第一歩だと思っています。

 純粋な心を持っている時期に、興味がわいた名作や偉人伝に親しむことは、人生で何人もの友や師と巡り合うようなものです。
 子どものころの読書体験のおかげで、私自身大人になってからも、とくに精神的につらいときほど、眠る時間を削って大好きな歴史小説に没頭する習慣がつきました。

 小説を読んでいると、自分が不幸だと感じていることも、とてもちっぽけなものに思えてきます。本から得た感動や教訓がなかったら、どれほどつまらない人生だったかと想像することもあります。

 これから子育てをされる方はぜひ、子どもの成長段階に応じて、子どもが関心を持つ分野を中心に、読書に親しめる時間を大切にしてあげてください。

(※以上の原稿は書籍『一流の育て方』から抜粋して掲載しています)