A4用紙に本1冊分の「ハイライト集」をつくる

本を読み終えたときに書き出されている引用のリストが、「その本を読書することによって自分が吸って、吐いたすべて」です。

 

年700冊読破する僕が、読むときに必ずやること(イラスト:後藤グミ)

僕も本を読むとかなりの部分を書き写したリストができ上がりますが、もちろん書評を書く際にはそれらすべてを生かすわけではありません。

それどころか、実際の執筆時には、写しておいたフレーズの大半はボツになります。厳選された引用箇所だけが書評に反映されるわけです。

とはいえ、たとえ書評に採用されなかったとしても、引用しておいたことは間接的に読書体験に反映されます。書き写すという行為を挟むことによって、著者の思考や主張がより鮮明に見えるようになるからです。

本を読み終えたら、ぜひその引用だけをじっくりと読み返してみてください
このリストは、いわば1枚の音楽アルバムのうち、自分自身の心が動いたパートだけをつなぎ合わせた「リミックス音源」のようなものです。

これによって読書の楽しみをさらに倍増させることができます。

(第13回に続く 3/10公開予定)

印南敦史(いんなみ・あつし)
書評家、フリーランスライター、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役
1962年東京生まれ。広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。
「1ページ5分」の超・遅読家だったにもかかわらず、ビジネスパーソンに人気のウェブ媒体「ライフハッカー[日本版]」で書評欄を担当することになって以来、大量の本をすばやく読む方法を発見。
その後、ほかのウェブ媒体「NewsWeek日本版」「Suzie」「WANI BOOKOUT」などでも書評欄を担当することになり、年間700冊以上という驚異的な読書量を誇る。
著書に『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)のほか、音楽関連の著書が多数。