先行する欧州では、一連の利下げで一時期の貸出の減少からは抜け出したが、増加ペースは1%前後のままと、ぱっとしない(図表3参照)。そもそも景気が悪くデフレ気味であるから金利を下げるので、資金需要が弱いためだ。

 貸し出しによる収入は貸出「量」×貸出「金利」で計算できる。日本では、金融緩和後、金利と貸出ボリューム(量)がある程度連動している(図表3参照)。これによれば、仮に10bp金利が低下すれば4%程度貸出が増加する計算となり、欧州より反応は良好にみえる。しかし、ボリューム(量)が4%拡大しても、貸出利回りが10bp低下してしまったら、現在の平均貸出利鞘ざや(貸出利回り-預金利回り)約1.0%の10%程度に相当するため、ボリューム増加では収益減少分は補い切れない。

◆図表3:銀行平均金利(横軸)vs貸出(縦軸)

出所:日銀データよりマネックス証券作成


 なお、他国ではやはり預貸利ざやは大きく低下しており、一部の住宅ローンの金利が引き上げられているスイスでも、他の分野ではやはり金利は低下している。

銀行収益への間接的影響
リテール手数料引き上げは困難

 銀行収益の2番目の要素は手数料収益である。これが、預貸収益が減少する中では最も期待されている分野だ。他国では、以前から預金口座の管理手数料を取得する例は珍しくない。その代わり、金利優遇やカード・サービスを拡充したりしている。しかし、邦銀の競争環境の厳しさを考えると、特にリテール顧客向けの手数料を引き上げるのは、なかなか難しいのではないだろうか。

 日本でも様々な口座管理手数料導入の動きがあった。2000年代初頭に三菱東京UFJなどの大手行が、高い優遇金利を払う代わりに、残高が一定以下の口座に手数料を課すという新型預金を導入した。しかし、恐らくその後の競争環境に鑑みてか、数年で手数料は廃止された。2005年のペイオフ解禁のときに、新たに金利ゼロの決済用預金が導入された際は、預金保険料率が普通預金金利より高いことや管理に手間がかかることから、口座管理手数料を取得する地銀もあったが、結局、手数料徴収は主流にはならなかった。現在でも残っている手数料としてはATM手数料があるが、これも大手行が2000年代初頭に土曜日のATM手数料を相次いで引き上げた際には、メディアなどから批判を浴びた。

 むしろ、今後、債券投信など、利回りの低下に引きずられて手数料圧縮のプレッシャーがかかる商品も出てきかねない。また、もし金利の低下で「タンス預金」が増加してしまった場合、顧客獲得のために手数料やサービスを引き下げる銀行が出てきても不思議ではない。銀行たちは、過剰な預金は欲しくなくても、顧客は決して失いたくない。このため他行が手数料の引き上げを断行しない限り、自行もできない「囚人のジレンマ」に陥ることになる。