更にいえば、「小保方問題」等で取りざたされた博士論文の審査についても、厳しいルールがある。筆者が所属した英国の大学では、博士号授与の最終権限を持つ「第一審査員」は、大学が依頼した外部の専門家が務め、大学が示すオープンなガイドラインに基づいて論文を審査する。学内から選ばれる「第二審査員」は、指導教官以外が務める。指導教官は、審査には加わらず、口頭試問の後、審査結果を聞かされるだけである。

 これに対して日本では、第一審査員は指導教官が務め、第二審査員も学内の教員が務める。学生を評価する方法について、日本と欧米では根本的な違いがあるといえる。欧米では「情」や「主観」が入り込まないように、オープンな評価基準と学外の専門家によるチェック機能が確立しているのである。

事件は外部の目が届かない「密室」で
中学校の曖昧な「権限」の下に起こった

 今回の中学生自殺問題で明らかになってきている、中学校の杜撰な資料管理と間違った生徒指導は、生徒の進路選択の権利尊重を第一とし、オープンな評価基準と外部のチェック機能があれば、起き得なかったことである。

 中学校が公表した調査報告書によれば、万引き事件が起きた時、店に出向いて対応した教諭は、生徒指導担当の教諭に口頭だけで報告した。そして、生徒指導担当の教諭はパソコンに入力する際に名前を間違え、自殺した生徒の氏名を記入したという。学校は内規で「万引きの報告があった場合には、生徒、保護者、担任、学年主任、生徒指導主事の5者面談や別室指導、奉仕活動などの指導をする」と定めていたが、5者面談など内規に沿った対応はすべて行われなかった。生活指導の会議では、万引き事件について他の教諭から氏名の誤りが指摘されたが、元データが修正されることはなかった。

 また、中学校は、これまで高校入試の校長推薦を出す判断基準としてきた非行歴の調査対象を「3年時のみ」としてきたが、昨年11月になって「1~3年時」に広げていた。校長に推薦基準を決める権限があるらしいが、なぜ突如変更したのか、その理由は公表されていない。

 調査報告書には、「1~2年時を含めると決めた時点で、何を根拠資料にするか学校として検討すべきだったが、その意識はなかった。根拠資料の重大さを職員は認識していなかった」と指摘している。また、基準変更前には3年時の非行歴のみ確認すればよかったため、資料ではなく教員の記憶のみに頼って判断していた。つまり、1~2年時まで遡ることは事実上無理だったのだが、そのようなルール運用上の問題点が、基準変更に際して考慮されることはなかった。