【米山】これまで、生産者のために店舗を増やそう、より多く売ろうという気持ちで拡大を図ってきましたが、株主のために店舗を増やそうという意識はなかった。今期はそれを意識しすぎて、結果的にはやり方を間違えたかもしれません。
【藤沢】そうはいっても、米山さんのビジョンに共感している株主もたくさんいらっしゃるのでは…?
【米山】はい。株主からは、成長しろという声以外に、既存店を見直すことが5年後、10年後の成長につながるから焦らないほうがいい、という意見もたくさんいただいています。本当にそうだと感じますし、ありがたいです。
当社は上場から3年目でまだ慣れない部分が多く、実際のところ、株主対応などに振り回された2~3年でした。もちろん、上場してよかったこともたくさんあり、これまでの感覚を大事にしながらも、数字も含めて、分かりやすい成長戦略、事業計画を作っていかなければならないことを学びました。
「伝える」ための時間は惜しまない
【藤沢】ビジョンと数字のバランスはどうですか?
【米山】そこが難しいところです。創業から14年間は、僕が数字を管理しなくても、自社のミッション、生産者の想いを伝え続け、あとは副社長や営業に任せることで成り立ってきました。でも、これからはもう少し経営面をみていく必要があると思っています。
既存店をみるうえで重要なのは、米山イズムを徹底していても、店長が優秀でも、数字が下がる店がある、ということです。
たとえば、生産者や、店の考え方を支持してくださっている常連さんに入れ込み過ぎて、店全体に目が届いていないことがある。生産者の想いを大多数の人に「広く」伝えていくのが店長の仕事ですが、感情移入し過ぎて、共感してくれている人にばかり「深く」発信してしまいがちなんですよね。
【藤沢】なるほど。これまでは米山イズムのハートでよかったけれど、これからは米山さんの頭脳に近づいていく必要がある。店長も経営者としての視点を持つよう、バージョンアップが必要なのかもしれませんね。
【米山】そうですね。そのあたりの教育が足りなかったかもしれません。
なぜ売り上げが必要かを考えれば、おのずと答えは見えてくるはずであり、売り続けないと生産者さんは生産が続けられない。それでは生産者さんの想いを知っただけで、伝えられたことにはならない、自己満足ではだめ、という意識改革が必要ですね。
【藤沢】意識改革とスキルアップですね。お店にいるメンバーは、経営指標の読み解きまで手が回っていない。
【米山】経営感覚を持ったスーパー店長の育成が必要です。たしかに、そういう意識、スキルを持った店長の店は売り上げもいい。そういった教育を疎かにしていた僕の責任です。
ただ、それを具体的にやるのは今後も部長やマネージャーであり、僕はこれまで以上に夢を語ることを強化します。