期待されていない、出産や子育てしながら働く環境が整っていないなど、女性が社会で活躍するには障壁もある。それをどうとらえるか。女性が抑圧されている印象があるサウジアラビアに、考え方のヒントがあった。1000人以上の経営者へのインタビューを15年にわたって続けてきた藤沢久美氏の最新刊『最高のリーダーは何もしない』からお送りする。

後身を考える
先輩を思いやる

 30代前半で、私は初めて政府の委員会のメンバーになる機会を得ました。
しかしそれは当時の政府が審議会のメンバーの3割を女性にすると閣議決定したからであり、「私が男性だったら、この席に座ることはまずなかっただろう」と思いました。
 そこで私が考えたのは、「次にまた女性のメンバーが後任者として同じ席に座るときに、少しでも期待してもらえるような結果を、前任者として残そう」ということでした。

 まわりのメンバーの方たちとの実力の差は歴然としていましたから、委員会で立派な結果を残すことはできなかったかもしれませんが、「この会議はどういう方向を目指しているのか」「それに向けて自分が貢献できることは何か」を真剣に考えながら参加するようにしました。

 性別に関係なく、リーダーというのは、新たなことにチャレンジする存在です。自分を超えるリーダーが生まれてくるように、自分たちのチームがさらなる高みを目指せるように、「後進のために何ができるか」という視点を持っておくことも大切です。
 私たちがいまリーダーの立場にいることができるのも、先輩リーダーがつくってくれた土壌のおかげだということを、時には思い出したいものです。