プラント業界に降ってわいた特需となるか。

 船舶に搭載する「バラスト水処理装置」の受注をめぐり、各社の競争が熱を帯びてきた。

 JFEエンジニアリングは6月末、日本郵船の自動車運搬船への搭載を、日本企業として初めて受注した。「今では毎日、2~3件の引き合いがある」(原野昌太郎・JFEエンジニアリング舶用機械事業部長)として、2年後には年間300基の受注を目論む。

 また、日立プラントテクノロジーでも「近々、第1号の受注が決まりそうだ」(沼田好晴・環境エンジニアリング事業部バラスト事業推進部長)と鼻息が荒い。両社のほかに三井造船、クラレも、商品化を急いでいる。

 バラスト水とは、船体を安定させるために船腹に取り込む海水のこと。積載物の変動に応じて海水を排出する。年間で100億~120億トンものバラスト水が世界中を移動しており、プランクトン、卵、細菌などが寄港地の生態系を壊す可能性が指摘されている。処理装置を取り付けることで、海水を浄化する仕組みだ。

 ちなみに日本には資源を積み込んだ大型タンカーが数多くやって来るため、バラスト水の“輸入”は約1700万トンにすぎないが、空のタンカーで向かうため“輸出”は約3億トンと大幅な“輸出超過”になっている。

 バラスト水問題がにわかに高まっている背景には、国際海事機関(IMO)による「バラスト水管理条約」の発効が現実味を帯び出したことにある。

 同条約は2004年2月に採択されたものの、発効条件である「批准国30ヵ国以上、船腹量35%以上」に対し、現状は26ヵ国、約24.5%しか批准していないため、発効には至っていない。

 しかし、今年は国連の「国際生物多様性年」。10月には生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)も名古屋で開催される。生物多様性への世界的な関心の高まりで、「今年中に(バラスト水管理条約の)発効条件を満たすのは確実」(業界関係者)と見られる。

 条約が発効すれば、バラスト水のタンク容量や建造年数によって、排水処理が段階的に義務化され、17年1月までに、すべての外航船が規制の対象となる。

 そうなれば、巨大な市場が生まれる。既存船の数は約4万隻といわれている。さらに加えて、新造船の数は毎年、約1000隻に上ることから、市場規模は2兆~3兆円といわれる。

 バラスト水処理装置メーカーは、開発中の企業などを合わせると国内外で20~30社に上る。開発では海外企業が先行しており、特に韓国では「国策としてメーカー育成を後押ししていることもあり、早くも2割安で営業攻勢をかけている」(業界関係者)という。いずれにせよ、今後は激しい争奪戦が繰り広げられることになりそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 松本裕樹)

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