「ゴルフはボールをまっすぐ打つゲームではない。ボールを曲げてコントロールするゲームなんだ。だから、まっすぐ打つ練習をしてはダメだよ」
これは、新帝王といわれた偉大なプレーヤー、トム・ワトソンの言葉です。私が渡米して、デビッド・レッドベターの下でティーチングを学んでいるとき、そこにワトソンが現れて、そう話しかけてくれたのです。
彼の言葉には、上達のヒントが隠されています。それは「ボールを意図的に曲げることで、初めて、まっすぐ打つ方法がわかる」ということです。
練習場でアマチュアゴルファーを観察していると、その大半がまっすぐ打つ練習ばかりをしています。そして、「いつまでたってもスライスが直らない……」という悩みを多くの人が抱え続けることになる。万年スライサーから脱却できないのは、まっすぐ打つことにこだわり過ぎるからなのです。
まっすぐ打つとスライスになるのですから、思い切って、フックを打ってみましょう。曲がりを大きくした「どフック」でも構いません。意図的にボールを曲げてみることで、スウィングのメカニズムが理解できます。万年スライサーは、フックを打ってみると、ストレートの球筋になるケースがよくあるのです。
スライスの原因は、大別すると2つあります。1つは、スウィング軌道がアウトサイド・インの、いわゆる「カット打ち」。もう1つは、スウィング中にフェースが開いてしまい、オープンフェースでインパクトすることです。
自分でスライスの原因がわかる人は、軌道やフェースの向きを修正してほしいのですが、わからない人はクラブをインサイド・アウトに振ってみたり、フェースを少しかぶせたりして、工夫しながらフックボールに挑戦してみましょう。
参考までに、体のつくりによって、スライス系のボールが打ちやすい人と、フック系のボールが打ちやすい人がいます。上のレベルを目指す人は、その点も考慮して持ち球をつくる必要があります。
(取材・文/小山俊正)