このコラムの第9回で、済州島による中国人観光客誘致の工夫に触れた。その工夫の一つは、済州島に50万ドル以上の投資をした外国人が5年以上滞在すれば永住権を付与されるという思い切った奨励策である。これが海外に拠点を作ろうとする多くの中国人の背中を力強く押した。
こうした済州島の努力は、数字にも表れた。済州道が最近明らかにした統計データによれば、今年7月25日までに済州島を訪れた外国人観光客は昨年同期比35%増の40万0723人となったという。
そのうち、中国人観光客が20万人で、昨年同期の2倍である。この成績に済州道側は、このままでいけば今年通年70万人の海外訪問客の誘致目標を繰り上げで実現できる可能性が出てきたばかりでなく、うまくいけば80万人の大台にも届きそうだ、と鼻息が荒い。
中国人観光客を誘致するために韓国は、今年1月から済州島を訪れる中国人観光客に対してビザ免除という思い切った措置に踏み切った。これも中国人観光客を大幅に伸ばした理由の一つとなっている。
このビザ政策はもちろん済州島振興のための措置として実施されたものだが、韓国の中国人観光客に対するビザ発給政策は日本をかなり意識した一面がある。
今年7月、日本は中国人の個人観光客に対するビザ発給条件を大きく緩和した。すかさず韓国法務省も同27日に、さらに緩和されたビザ発給措置を発表した。
中国側の報道によれば、韓国は8月1日から、フォーチュン・グローバル500にランキングされている外資系企業に勤務する中国人社員、学校教師、著名大学卒業者などに対して、1年有効のマルチビザ(期限内なら何度入出国しても有効なビザ)を発給するようになった。
これまで1年マルチビザの発給は弁護士、医師、教授など社会的地位の高い職業に限られていたが、今度は小中学校の教師、名門大学の卒業生などにも範囲を広げる。さらに韓国を経由する中国人観光客に2次ビザ(有効期間中に2回の入出国が可能なビザ)を発給し、仁川国際空港を利用しやすいような条件を作り出す。団体旅行の最少人数も現行の5人以上から3人以上に引き下げる方向で検討するそうだ。
さらに、ビザの申請を簡素化する方向へも踏み切った。在中国韓国大使館によれば、ここ5年以内に韓国を含む経済協力開発機構(OECD)加盟国を2回以上訪問した人や北京戸籍を持つ人は、ビザ発給申請書と身分証の写本だけを提出すればよい。銀行の預金残高証明書と住宅・車両の保有証明書などの書類の提出は不要となった。