後見人による横領などの不正が深刻な問題に

 後見人の権限を拡大して、より利用者の側に立った後見活動を促すようにしたことに現場からは賛意の声が多い。

 被後見人宛の郵便物の開封や管理についてこれまでは法律の裏付けがなかった。それを、民法の一部改正で、利用者宛の請求書などの郵便物を直接受け取って開封できるようにした。

 電気、水道、ガス代など公共料金や家賃、電話、通信販売などの請求書や督促状などが次々届けられても、きちんと管理できない認知症高齢者は少なくない。後見人が預金通帳を確認しながら振り込むこともよくある。

 死後事務も法定化された。死亡した被後見人の火葬や埋葬に関する契約を結ぶことができるようになった。被後見人が亡くなると、その時点で後見活動はおしまいだった。財産などは相続人に引き継がれるが、身寄りがいない時には、後見人が葬儀の段取りやその費用を出していたが、法的根拠はなかった。

 こうした前向きな制度改革が進む一方で、後見人による横領などの不正が深刻な問題として浮上している。

 とりわけ、弁護士や司法書士など専門職後見人による財産の着服などの不正が増えてきた。最高裁の調査では、2015年中に37件、被害総額約1億1000万円が確認された。件数としては過去最悪となった。2014年には、件数こそ22件にとどまったが被害総額は約5億6000万円にも上った。

 親族などを含めた成年後見人全体の不正は、2014年に831件、被害総額56億7000万円にも達し、過去最高額となった。2015年は521件、29億7000万円になった。

 福岡地裁は1月に、業務上横領として司法書士に有罪判決下した。高齢女性から約750万円を着服し、競馬に使ったという。横浜地裁でも3月に、懲役4年6ヵ月の判決を弁護士に下した。事務所の立て直しに流用したものだ。

 後見人は、被後見人の預貯金口座からの金銭の出しれを含めて、後見活動の報告を家裁に定期的に提出する義務があり、家裁がチェックすることになっている。その結果、これまでに年間700人以上もの後見人が選任を取り消されている。

 だが、家裁の担当者は少なく、対応には限界がある。必ずしも万全とは言い難い。不正行為は後見制度への信頼を足元から揺るがしかねない。監督体制の強化はすぐにでも着手すべきだ。