「トランプ! あんたの本拠地のニューヨークでは勝てたかもしれないが、このカリフォルニアで勝てると思うなよ! 俺たちの州から出てけ!」と叫びながら、自転車で走り回る白人の若者もいた。

 白と緑の色鮮やかなメキシコ国旗がハタハタとあちこちではためき、ヒスパニック系の若者集団が大通りの角にあるガソリンスタンドに陣取って、トランプ阻止を訴える。熊の絵柄が入ったカリフォルニア州旗より、メキシコ国旗の方がはるかに数が多い。ここは米国ではなく、メキシコかと錯覚するほどだ。

 反対に、赤・青・白の星条旗カラーのファッションでやってきたトランプ支持者らは格好のターゲットとなり、「レッドネック(差別主義者)」と叫ばれていた。「この国が好きだから星条旗カラーを着ているのに、なぜ差別だと叫ばれなければならないんだ?」と、カウボーイ・ハットを被った青年が反論。反トランプ派の女性の1人が、トランプロゴの入った赤い帽子を被った男性につばを吐き、男性は「ガッド・ブレス!」と叫び返す。一触即発の雰囲気だ。

「反トランプ派」に占拠される
演説会場周りで垣間見た人間模様

会場周辺にはメキシコ系アメリカ人の若者たちが大挙して集まっていた

 何とかUターンして大通りに出ると、交差点は反トランプ派にほとんど占拠されていた。トランプ支持者らが交差点を横断しようとするのを待ち構えて、「ダンプ! トランプ!」と韻を踏んで叫ぶ反トランプ派たち。信号が青になり、クルマで前進しようとしても、まだ数十人が通りに立っている。なんとか彼らの横を通り抜け、数ブロック走って住宅地の路上にやっと車を駐めた。

「オレンジ郡にはもうすでに、たくさんオレンジがある。悪いけどトランプ、およびじゃないから」

 そう書かれたプラカードを持って静かに通りの角に立っていたのは、白人女性のケリー・クラウス・リー(27)だ。トランプのオレンジがかった顔色と髪の毛の色を皮肉ったそのジョークは、殺伐とした会場付近で珍しく笑いを誘っていた。

「女性、イスラム教徒、ヒスパニック系に対するトランプの発言に抗議します」と語る非営利団体職員のクラウスは、18歳で投票権を得た後の最初の選挙で迷わずオバマに1票を投じた。バークレーなどリベラルな地域に住んだこともあり、保守の強いオレンジ郡に引っ越してきた後も、一貫してリベラル派で通してきた。「自分が妻と同性婚できたのも、オバマのお蔭。彼には一生感謝し続ける。彼が大統領でなかったら、まだ結婚できなかったかもしれない」と語る彼女。

 カリフォルニアでは住民投票の結果、同性婚が違法とされていたが、オバマが同性婚を支持する発言をし、その後最高裁判決で同性婚が認められるという一連の流れにつながった。

「2年前に正式に結婚できて、当時まだ学生だった妻を、自分の医療保険で家族としてカバーすることができた。本当に嬉しかった」