親に何も言われないから「自分で考える力」がつく

ムーギー 今度はちょっと視点を変えて、佐山さんの子育てというか、お子さんとの関わり方についても伺わせてください。

佐山 正直、子どもが赤ちゃんのころは、ほとんど関わってこなかったというのが実感ですね。ちょうど会社を辞めようと、司法試験の勉強をしていたころだったということもあって、赤ちゃん時代の子どもの面倒はあまりみませんでした。でも、3歳とか少し大きくなったら、むちゃくちゃ子どもと遊びました。野球やサッカーなんかもよくやりましたし、トランプのナポレオンなんていやというほどやりました。もっと小さいころはウスノロとか、大貧民とか、とにかく本気で子どもと遊んでいましたね。

ムーギー それは、「子どもとめいっぱい遊んであげなくては」という、そういう教育方針だったんですか?

佐山 そういうことでもないんですけど、基本的に私自身が遊びが好きなんですよ。トランプとか勝負事も好きだし。

ムーギー なるほど、トランプは勝負ですもんね。トランプを本気でやることで、お子さんたちも勝負好きになったという面はありますか?

佐山 それはどうでしょうね。私は思うんですけど、子どもってみんな違うんですよ。うちは子どもが3人いますけど、みんな見事に違います。

ムーギー 生活環境はそれほど違わないはずなのに、みんなはっきり違うんですね?

佐山 ええ、子どもには、生まれつき決まっている性格みたいなものがあるんですね、きっと。だから、私は子どもに対して「何かせぇ」って言ったことはないですね。「勉強せぇ」とも言わなかった。

ムーギー『一流の育て方』の中で行っている多くのアンケート調査のなかでも、いわゆるエリートと呼ばれたり、リーダーシップを発揮している人たちに「親に一番感謝している教育方針は?」って聞くと「何かを強制されなかった」「自由に決断させてくれた」という人が多いんですよ。やはり佐山さんも、そのように育てられているんですね。

佐山 私の場合は「何かせぇ」って私が言わないものだから、子どもたちが勝手に考えるようになったって感じでしょうね。親に言われないから、自分で考えるしかない。

ムーギー 佐山さんご自身も、親御さんにはあまり何も言われない子ども時代だったんですか?

佐山 うるさいことはあまり言われませんでしたね。でもいま思い出してみると、親父によく言われていたのは、小学校のときにイタズラをして怒られることがあるでしょう。そのときに「○○くんがやろうって言ったから……」って言うと、「○○くんが泥棒しようって言ったら、オマエは泥棒するんか!」ってものすごく怒られましたね。

ムーギー 前にこの連載でお話をうかがったディー・エル・イーの代表の椎木隆太さんも、全く同じことを言われていました。父親からはほとんど何も言われなかったけれど、「自分の意志で決めろ」ということだけは強く言われたと。『一流の育て方』の第1章で真っ先に強調しているのも、非常に多くの家庭で「自分で決める習慣を持たせること」が重視されていたということでした。

佐山 それについては1回、2回でなく、何度も親父に言われました。「他人がどうこうじゃなく、自分で決めるべき」というのは、そこから心にしみついている部分があるのかもしれません。(構成:飯田哲也)

(後編は5月30日公開予定です)