問題を整理しよう。サラリーマンは現役時代、会社の健康保険組合や政府管掌健康保険に加入している。定年退職して収入が減り、一方医療費がかさむようになってから、市町村が運営する国民健康保険(自営業の人びとはもともとここに加入している)に移る。その高齢者の医療費負担の重さが、問題の根源にある。

 この3月までは、老人保健制度という高齢者の医療費を賄う共同事業があった。各種健保がおカネを出し合って支えてきた。それを後期高齢者だけをくくりだしたのである。ちなみに、新制度の負担は税金が5割、各種健保つまり現役世代からの支援金が4割、後期高齢者の保険料は1割である。

 「突き抜け方式」というのは、簡単に言えば、サラリーマン生活が長かった退職者は、かつて加入していた健保から離脱せず、現役サラリーマンが面倒を見る制度だ。産業単位、あるいは地域単位に応用しても考えられる。それらを単位とする健保が、財政責任を負う保険者である。高齢者だけをくくりださない、皆保険の発想であり、ドイツがこの方式を採用している。

 もうひとつは、その医療費全額を税金で賄う方式で、英国型である。英国の場合、正確には若干保険料が入っているのだが、全額税方式と呼んでもかまわないほど、わずかである。この場合、保険ではないから保険者はいないが、税金を投入するのだから運営責任者は国である。英国の場合は国民全員が対象だが、高齢者をくくりだして全額税方式にする選択肢もある。

 ともに運営主体と責任は明確になる。前者は全額保険料、後者は税金であり、保険料と税金が混合することで制度が複雑になり、それゆえ受益と負担の関係が不透明になり、医療費(受益)を抑制すれば保険料や税金(負担)が軽減されるというインセンテイブが働きにくい、という欠陥は解消される。

 どちらが日本になじむのか、デメリットが小さいか、あるいは第三の方法があるのか、いずれにしろ、メスを入れるべき欠陥は明らかなのである。

 民主党は新制度の廃止法案を国会に提出する。だが、それだけでは何の意味もない。「突き抜け方式」か「全額税方式」か、独自案をもって政府・与党を追い込んでこそ、国民の支持を得られるであろう。