前回の掲載から2週間が経過した。お盆休み明けで仕事が忙しく、職場で同僚や先輩・後輩と議論する時間はなかったかもしれない。しかし、そのおかげで、人の意見に左右されずに考えることができたはずだ。
さて、このケースを企業研修で使用すると、必ず次のような質問が出る。「石森製作所というのは、本当は、わが社のことですか。」 この質問は繰り返される。ということは、ケースはフィクションであるにもかかわらず、日本中の企業でケースに記述されているようなことが起こっているわけだ。このケースに記述されている問題の解決は、本当に難しい。しかし、解決の糸口はある。そのヒントは、「過去の呪縛から自らを解放する」ことである。ただ、これができないから、問題は解決できない。
設問に対する回答
まずは、設問に関する私なりの回答をしめそう。
設問(1)ゼロディフェクトをめざすべきか、一定割合の欠陥を許容するか。
回答(1)精神論として、ゼロディフェクト(欠陥ゼロ)を目指すことは正しいが、実際の品質管理活動においてゼロディフェクトの達成は、著しく困難であるばかりでなく、対費用効果はきわめて悪い。品質管理活動への投資に見合った品質レベル(たとえば、千分の一とか万分の一)を設定し、欠陥品は、検査工程でチェックすることに経済合理性がある。品質を作り込むための諸活動を行うとともに、徹底的な検査を並行して実施しても、ゼロディフェクトはなかなか達成できない。
品質管理活動にはコストがかかる。品質問題の発生を防止するための活動(品質管理、品質計画、品質管理教育・訓練、工程管理など)にかかわる予防コスト、品質検査や材料等の受け入れ時の検査などのゼロ欠陥とするための評価コスト、不良品を良品とするための追加加工や、不良品に含まれる材料を外販するために実施される解体業務等に要する外部失敗コスト、そして、不良品が社外に流出してからの対策(リコール、訴訟関連活動など)に費やされる外部失敗コストを区分して、正確に計算することを強くお奨めする。