今日のビジネス書にも影響を与え続ける1冊

 本書は、アメリカで2003年に、日本語版が2004年に刊行されていますが、10数年を経た今も広く読み継がれ、後に続くビジネス書にも影響を与えています。

 効率的なマネジャーになること。状況に合わせたリーダーシップを発揮し、部下を育成していくこと。顧客と同じ視点で考えサービスの成果を上げていくこと――これらはビジネスですごく大切なことなのですが、目の前の課題に取り組むうちに、ふとあることに気づきます。

 自分はなぜこの会社で働いているのか?なぜ、生きているのか?

 そこに、ビジョンが必要となり、単なる経済的成功ではなく意味ある存在、意味ある人生を生きることにつながっていくのです。

 本書の原タイトルは「FULL STEAM AHEAD!」です。蒸気船が走っていた時代の言葉で、「全速前進!」と訳されます。エンジン全開で進むという意味です。現代では、少し意味が変わり、目的がはっきりしていることで、確信して迷いがなく、それを実現できる自信にあふれ、どんな障害があっても断固として進んでいける状態のこと、と本の冒頭で説明されています。

 この「FULL STEAM AHEAD」は、今のビジネス書にも登場します。

 ヨーロッパで活躍するイノベーションコンサルタントのハイス・ファン・ウルフェン氏も著書『START INNOVATION!〔スタート・イノベーション! 〕』でこの言葉を使っています。ウルフェン氏は、イノベーションを起こすための「FORTHイノベーションメソッド」を開発しました。そのFは、「FULL STEAM AHEAD」のFなのです。

 企業がイノベーションを起こすには、その会社がどのような価値観を持ち、ビジョンを持っているのかを社内全体で話し合い、そのビジョンのもとで進んでいかなければならないと言います。

 このように、本書は今もなお、最新のビジネス書に影響を与え続けているのです。