岡田先生によると、意外に多いのが、教師間のトラブル。同僚間や校長、教頭、部下の教師との人間関係の問題がストレスになって、精神疾患を引き起こしている。昔のように、生徒との関係の問題だけではなくなってきているようなのだ。

 実際、筆者はこれまで引きこもり当事者を100人近く取材してきたが、その印象としても、親が学校教師という家庭は少なくない。

地域共同体の崩壊で
「社会からはみ出す人」が突出

 症状としては、過呼吸やパニック症状などの不安焦燥感、睡眠障害、腹痛、頭痛、だるさ、意欲の低下などを訴えてくるという。

「ここ10年ほどで増えてきたのは、リストカットなどの自傷行為や過食などの食行動の異常、そして解離症状などですね。激しい幻覚妄想状態の方は少なくなりました。全体的に軽症化している感じがします。早いうちに気づかれて、早期発見、早期治療という感覚が、情報として浸透してきたということもあるのではないでしょうか」

 また、都市型の生活スタイルに変わってきて、社会全体で支え合う地域共同体が崩壊。社会からはみ出す人がいると、すぐに突出してしまって、早めに診療にかかる機会が増えたということも、背景にはあるのかもしれない。

「共同体というのは、裏を返せば、封建的だったり、うっとうしかったり、マイナスの要素として感じていましたけど。いまの時代になると、共同体がなくなったために、困っちゃっている人がすごく増えているなと思います」

 いまは、ポストモダン社会といわれ、大きな夢を見られるようなストーリーがなくなり、個人が微分化してしまった。

「個人の自分だけの物語でもいいのではないかという時代もあったけど、人間が根本的に持っている存在の不安に耐えられなかった。皆、何かの物語を探していると思うんですよ。せめて地域共同体でもいいですし、“中間的な物語”を作れないと、人はさまようのではないか」