原材料にノルマルヘキサンを混ぜると、原料に含まれている油が溶け出す。加熱するとヘキサンは蒸発して油のみに分離される。これを繰り返すことで原材料から徹底的に油をとり出すことができるのだ。もちろんノルマンヘキサンは揮発性のため安全には問題がない。

「ノルマルヘキサンは混入する危険はありません。ただ私たちは事件の教訓から化学物質は使うべきではない、と考えました。当社は圧力をかけて搾る昔ながらの圧搾製法を守っています。また、サラダ油に精製していくためには通常、リン酸、シュウ酸、苛性ソーダ、活性白土など様々な化学製品を使います。うちではそうした添加物は一切使用しない代わりに『湯洗い』という方法で精製しています」

湯洗い洗浄。水と油は混ざらないので汚れだけを除去できる

 この湯洗い洗浄方式で米澤製油は特許を取得している。薬品ではなく湯で汚れを落とすのだ。その後、遠心分離機にかけて水分を除去すればきれいな油が残るというわけだ。それにしても湯洗い製法と比べると市販のサラダ油は化学的な処理を経て、製造されていることがわかる。

「洗浄に使う水は井戸水を使っています。昔は12回洗っていましたが、現在は技術も良くなったので6回です。その後、真空にして加熱する脱臭工程を経て製品になります」

右が一般的なサラダ油、左が米澤製油のもの。色の違いがわかる

 湯洗い製法でつくった『なたねサラダ油』はかすかに色がついている。ナタネ種子の葉緑素がかすかに残っているからだ。大手メーカーの製品と比べると見た目の違いも一目瞭然だが、味わうとさらによくわかる。大手メーカーの製品はべったりとしているが、米澤製油の油はさらりとしている。

「うちの油は胃にもたれないという声も聞きます。お客様のなかに胃の手術をされた方がいました。その方は油物を身体が受けつけなくなっていたのですが、『お宅のなら食べられる。天ぷらでもなんでも違和感もないので助かりました』というお声をいただきました。そんなことってあるんだな、と。そう言っていただけるとうれしいですね。もちろん、油にした後も無添加です。シリコンやクエン酸などを入れた製品は作っていません」

 外食産業で使用されている一斗缶入りの食用油はシリコン入りが多い。消泡剤のシリコンを入れることで揚げたい食べ物を一度に大量に投入しても吹きこぼれることはない。もちろん、シリコンは使用が認められている食品添加物だ。

「シリコンの問題点は」と顧問の山崎氏は言う。「泡が出ないので油の劣化の具合がわからなくなることですね。本来の油はカニ泡が出てくるから劣化しているとわかるんです。必要以上の熱をかけず素材を活かし丁寧に作った油にはそもそもシリコンやクエン酸は必要ないものです」

 自分も飲食店で働いた経験があるので、頷ける話だった。外食や惣菜を食べるともたれるというのは油が悪いからだ。現場で働いている人たちは油についてあまり意識していない。