そして迎えた帰還の日。
「はやぶさ」最後の任務とは?

 いくつもの危機を乗り越え、様々な打開策が飛び出すプロジェクトチーム。去年11月、その真価が問われる事態が発生した。搭載されていた4つのエンジンが全て使えなくなったのだ。地球を旅立って既に6年半。想定をはるかに超える飛行時間でエンジンが寿命を迎えていた。さすがの川口さんも打つ手がなかった。

「これで終わりかな、と。心の中では8割方もうダメだと」(川口さん)

 この時立ち上がったのは、川口さんから「諦めない」ことの大切さを教えられてきたメンバーたちだった。エンジンを担当した國中均さん。「はやぶさ」のエンジンを知り尽くしていた國中さんたちは、ある可能性を模索しようとしていた。

「4つのエンジンの残った部分を組み合わせれば、1つのエンジンとして使えるかもしれない」(國中さん)

 川口さんが見守る中、國中さんは2つのエンジンをつなぎ合わせるよう指示を出した。その結果、エンジンは動き出した。「はやぶさ」は地球に向かって再び飛行を始めた。

 『最後まで可能性を追求する』――この姿勢は、プロジェクトチームをたくましく成長させていた。

 そして今年6月13日。7年ぶりに「はやぶさ」が地球に帰ってくる日を迎えた。地球では「はやぶさ」の帰還を多くの人々が待ち構えていた。大気圏突入まで3時間。「はやぶさ」は、カプセルの分離に成功。任務は全て終わった。

 しかし、川口さん達は「はやぶさ」のために、もう1つ、特別な任務を用意していた。それは、地球の姿をカメラで撮影することだった。直前に、プロジェクトの皆で決めていた。

 「はやぶさ」は最後の力を振り絞って、地球にカメラを向けた。そして、ふるさと地球の姿をその目に焼き付けた。その後、大気圏に突入。「はやぶさ」は、流れ星となって夜空に消えた。地球に届けたカプセルが一筋の光を放っていた。

(文:番組取材班 植松秀樹)

取材を振り返って
【鎌田靖のキャスター日記】

 この夏、各地で長い列ができました。お目当ては小惑星探査機「はやぶさ」が遠い宇宙の彼方から持ち帰ったカプセルです。小惑星「イトカワ」の砂を採取して持って帰るというはやぶさのミッションを描いた映画も各地のプラネタリウムで上映されて超満員。「はやぶさ」ブームはいまも続いています。プラネタリウムが好きなもので、私も2回映画を見てきました。この映画結構泣けるのです。

 さて、「はやぶさ」はなぜ人を惹きつけるのか。イトカワへの着陸失敗、エンジントラブル、そして通信途絶というたび重なるトラブルを「決して諦めない」という信念で乗り切ったプロジェクトチームの技術者への称賛。あたかも自らの意思で飛行しているように思わせてしまう探査機の魅力(はやぶさ君と呼ばれていましたね)。