ここで思うのは、新技術の開発者だけでなく、使い手にも多くの需要と高額な報酬があるのではないか、ということだ。

 例えば、自動運転のタクシー数百台をシステム上で管理し、異例の事態に備えるようなシステム上のドライバー(?)のようなある種の応用技術の達人には、高額の報酬があっておかしくない。

 AIがすっかり自分自身をコントロールできるところまで、発達するにはそれなりに時間が掛かるだろう。また、その使い手には、それなりに大きなスキルの個人差があってもおかしくない。

 アメリカに多数いるらしい、自分は安全な場所にいて、無人機を操作して人的・物的な標的を爆撃する少々卑怯な兵隊さんのようなイメージの仕事だが、多くの職業領域にあって、「AIを使ってサービスを提供する」仕事を補助するニーズが発生する時期があるのではないか。完全なAI化に向けた過渡期の仕事というべきなのかもしれないが、その過渡期が案外長いかもしれない。

 巷間、医師や弁護士のような、現在知的とされている職業分野も、AIによって相当程度置き換えられるのではないか、との予想がある。

 確かに、病気の診断も、法律の解釈や利害対立を伴う交渉も、AIがスキルのある人間よりも優れた判断を行うようになる可能性が少なからずあるだろう。例えば、AIを巧みに用いて普通の人間弁護士の100倍の数の事案を処理できる「AI補助付き弁護士」が、多くの報酬を得て、AIスキルの乏しい弁護士から職を奪う、といったことが起こるかもしれない。医療にあっても、AI・ロボット等を使いこなすスキルが高い医師と、そうでない医師の格差が拡大する公算が大きい。

 AIの対象として馴染みやすい職業としては、ルールに基づいて行われる各種の行政や、それに付随するサービス業が考えられる。たとえば、公務員の事務的な仕事の多くは、比較的容易にAIに置き換え可能であるように思える。

 例えば、マイナンバーを活用した個人レベルでの取引・所得等の把握が完全になれば、税法に基づいて税金を計算し、徴税する業務の大半はAI化できよう。この場合、税務署と税理士の多くが不要になる。