はじめの焙乾には焼津式乾燥機を使う。これは熱源が横にあり、そこから庫内に煙を送り込むもので、最初はやや高温で乾燥させる。数時間経つと一度、セイロをとり出す。庫内の左右で温度が異なるのと、水分を均等に乾かしていくためだ。そうしてから少し温度を下げた乾燥機に再び入れていく。カツオの大きさに応じて、この作業を繰り返す。

 その後、急造庫(キュウゾッコ)という焙乾機で、燻煙によってさらに乾燥させる。これは下に薪をくべる形の直火型焙乾方式という方法で煙と熱によって、燻臭が強い節が出来上がる。かつお節は燃え盛る火と煙がつくりだす味なのだ。

 焙乾に使う薪を見せてもらうと、立派な木材だった。

──いい木を使っていますね。

「国産のナラでこれにはコストがかかっています。人件費の次に高いくらいです」

 荒節は約1ヵ月で、カビ付けをする本枯節は5~6ヵ月でできあがる。新丸正ではカビ付けは他社に委託しているが、本枯節を製造できる会社も減少し、現在市内では1社が引き受けるのみという。本枯節は製造に時間がかかり、半年ものあいだお金が寝ることになってしまうので資金繰りなどの問題も大きい。

多くの日本人が知らないかつお節
「荒れ節」と「枯れ節」の違い、わかりますか?

直営店、堅魚屋を開くなど一般消費者向けの商品も多数、手がけている

──国内需要はどうでしょうか。

「最近はだしパックがよく売れていますね。だしの素を使っていた方が化学調味料を使ったわかりやすい味ではなく天然の旨味を選ばれる傾向にあるようです。ただ国内は人口減少時代ですからスーパーの売上は下がっていると思います。対米輸出用のかつお節工場をつくったり、EU向けのかつお節工場に変えたり……という具合に変わってきています」

 かつお節業界は江戸時代から続いているという会社も多いなか、新丸正は創業81年の比較的若い会社だ。そうしたことが海外への展開などチャレンジを生む社風を生んでいるのかもしれない。

──以前、削り節を10種類ほど取り寄せて試食したことがあるのですが、全体的に枕崎産のかつお節は繊細な味で焼津産は濃厚な風味が特徴という印象がありました。かつお自体の産地は同じなのに、どういった部分で味の違いは出てくるのでしょうか?

「一つは製造工程、燻す木の違いとも言われています。もう一つ、理由として考えられるのはやはりカビ付けの有無です。減っているとはいえ、枯れ節をつくっているところが焼津より多い。枯れ節はある意味では荒れ節の表面を削って、カビ付けしていきますので燻臭が弱くなります。そういう意味では味のパンチが弱くなる」