夏休みのレジャー計画が楽しい時期。リオ五輪もあり、渡航者の増加が予想される。

 南米大陸での五輪開催については、蚊が媒介する「ジカウイルス感染症(ジカ熱)」リスクをめぐり、科学者が連名で世界保健機関(WHO)に開催地の移動か、開催延期を求める書簡を送付する騒ぎとなった。しかしブラジル保健相はこれを一蹴。現時点で、五輪の日程・開催地に変更はない。

 ジカ熱ウイルスは海外に生息する「ネッタイシマカ」だけが媒介すると思われがちだが、実は日本に常在する「ヒトスジシマカ」もウイルスを媒介する。日本国内でも注意は必要だ。

 厚生労働省は、この春に「夏の蚊対策国民運動」を開始。夏本番に向け啓発活動を強化している。

 市民の自己防衛方法は、一にも二にも「蚊に刺されない工夫」をすること。草原や森林地帯に遊ぶときは長袖・長ズボンが必須。日焼け止めを忘れても有効成分「DEET(ディート)」が配合されている虫よけスプレーは忘れずに。

 厄介なのは、一人の感染者(保菌者)を刺すことで「未感染」だった蚊が新たな感染源となり、周りにウイルスをまき散らす点だ。「蚊に刺された」場合は、万が一を考え、2週間は蚊に刺されない、ウイルスをまかない工夫が必要。

 ジカ熱はほとんど症状がない。せいぜい軽い発熱や、発疹、目の充血程度。しかし、妊娠中の女性が感染した場合、「胎児に小頭症やその他の先天的な障害を起こす」というエビデンス(科学的根拠)が米疾病予防管理センターから報告されている。胎児の脳細胞が侵され、小頭症以外にも自己免疫疾患や発達障害を生じる可能性があるのだ。

 WHOは、自身や配偶者がジカ熱ウイルス感染の発生地域に滞在した場合、少なくとも8週間、男性がすでに感染し、症状がある場合は、少なくとも半年間は妊娠を控えるよう勧告している。

 さて、蚊が媒介する感染症予防に一役かっているのが日本の蚊帳。アフリカや東南アジアではマラリアの感染予防に絶大な効果を示している。今年の夏は、蚊帳の購入を考えてもいいだろう。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)