IFRSの影響に関する議論の中で、影響が単に経理部門にとどまらず、その他の基幹業務に及ぶ事例として出されるのが、「収益認識」に関する論点である。
従来の日本の会計基準では、出荷時に売上の計上が可能であったが、IFRSでは着荷時あるいは検収時に売上の計上を行うことが求められるため、当該情報を適切かつ適時に集計するために、営業部門の協力や営業システムの改造が避けられないであろう、というポイントである。
この事例が非常に頻繁に語られているため、経理部門のみならず営業部門の方々も、IFRS導入は自部内に影響があるという認識を十分お持ちいただいていると思う。この理解は正しいが、IFRS導入の影響は、この売上の認識時点も含めて多種多様な影響を営業部門に与えることが想定されている。今回は、これらのポイントをいくつかの側面に分けて議論していきたい。
【売上認識の時点の変更】
営業システムの改造などの必要も
上述したように、IFRSでは出荷基準ではなく、着荷や検収基準による売上高の計上が必要になると想定される。そのため、自社のそれぞれの商品やサービスの特性や契約内容をIFRSの基準に照らして再検討して、出荷基準、着荷基準、あるいは検収基準のどの基準を採用することが求められるのか、またその情報を適時・適切に収集する手続きをどのようにすべきかを、経理部門等とあらかじめ議論する必要がある。
近年は、商品の付加価値を高める施策として、様々なサービスをバンドルした“ソリューション”化を推進している企業も多い。商品とそれに付随する様々な“サービス”(一定の無料補修やポイント付与等も含む)を独立した価値の提供行為であると捕らえて、当該“サービス”部分に該当する売上高を、当該価値の提供が完了する時点に繰延べることが要請される場合もある。
たとえば、ある商品を100円で販売した場合に、1年間の無料補修サービスが同時に提供される契約になっていた場合には、当該無料補修サービスの価値が10円相当と計算されると、販売時の売上高は90円のみ認識され、10円は販売時以降の1年間に計上されることになる。
これらの論点に関する経理部門等との議論の結果として、営業システムの改造や新たな情報の収集業務(場合によっては顧客との契約内容の変更等)が営業部門の業務として定義される場合がありえる。