日本の活躍を
アジア諸国も期待している

政権与党に課せられた最大の責務は、国内的には憲法改正であるが、それだけでは日本の責任は果たされない。

中国は国際社会の忠告に耳を貸さず、これからも南シナ海及び東シナ海において、国際法違反のまま自国の権益を守ろうとするだろう。1つの方法としてフィリピンの取り込みがある。様々な経済的恩恵を与えることで、国際法を事実上否定する戦術を取ると思われる。経済的な搦め取りの背後で、常に強大な軍事プレゼンスの示威も欠かさないだろう。

経済力と軍事力を前面に立てる中国の主張が国際法に合致しないのであれば、自由と法を重視する国々は、彼らに国際法を遵守するよう働きかけなければならない。彼らが他国の領土や領海を軍事力で奪うならば、それに対する抑止力を発揮しなければならない。

その先頭に日本はアメリカと共に立つべきである。南シナ海で起きることは、必ず、東シナ海でも起きるのである。南シナ海の秩序を守ることは、東シナ海でわが国の国益を守ることと同義なのである。

21世紀のアジアの秩序は国際法、平和的話し合い、各民族の尊重という普遍的価値と原則に基づくものでなければならない。中国の暴走を抑止するために、各国が助け合う仕組みを構築することだ。1つの国に対する中国の攻撃は、各国全体で受け止める。第一義的に法と話し合いを優先する。中国が応じない場合は、アメリカを中心とする軍事的枠組みを活用する。

その際、日本はアメリカと共にアジアの秩序と安定のために、全力を尽くすべきだ。日本が口先だけの国であることは許されないだろう。だからこそ、どのような形で日本がアジアに貢献し、日本の国益をも守ることができるようになるか、そのための憲法改正はどうあるべきか、これらすべてを活発に論議するのがよい。

日本は民主主義国なのである。国民の議論を元に、日本国の姿がつくられていくことを忘れてはならない。

日本の活躍はアジア諸国の期待でもある。だからこそ、世界に向けて日本の理念を掲げよう。明治維新で発布した五箇条の御誓文と十七条の憲法の、国民一人一人を大切にし、世界に視野を広げ、公正で公平な国づくりを目指した先人たちの叡智を、私たちも身につけよう。穏やかな日本の文明を基本に置いて、雄々しさと勇気を発揮できる国民として、21世紀の人類の理想を語り、その実現に力を尽くすことが大事である。

(「はじめに」より)