「そういうことじゃ。あとは、2012年のスペルドゥッティのメタ解析も参考になるぞ」
ヨーダはどんどん次の論文に進んでいく。メタ解析というのは、ほかの多くの研究結果をまとめて解析することにより、研究手法の違いや症例数の少なさなどを補い、信頼性の高い結果を導き出す方法のことだ。
この研究でも、瞑想時には脳活動の変化が認められていた。活動変化部位は、尾状核(不要な情報を除いて注意を向けることに関与)、嗅内野(心がさまようのをとめることに関与)、内側前頭前皮質(自己認識や統制に関与)など。やはり、瞑想には脳と心を整える効果が見込めるということだ[*7]。
疲れない脳の構造は「自分でつくれる」
「ここまでの話だけであれば、驚くようなことはないかもしれん。『瞑想をすれば心が落ち着く』なんてことは、わざわざ科学が実証せずとも、たいていの人がなんとなく思っとることじゃからな。
それだけでは終わらんところが、マインドフルネスの脳科学の面白いところじゃ。端的に言えば、マインドフルネスは脳の一時的な働き具合だけではなく、脳の構造そのものを変えてしまう」
いよいよ核心に近づいてきたようだ。ヨーダがにんまりと笑っている。
(次回に続く)