小さいときから、なんでも自分で決めさせてくれた――リーダーシップは教えるものではなく、目覚めさせるもの

ムーギー 社会に出てみると、大学や会社に入ったときは立派だったものの、その後低空飛行を続けて……という残念な人も多い。逆に入社時はパッとしなかったのにいつの間にやらグングン伸びていくような人もいらっしゃるじゃないですか。そこでぜひ伺いたいのが、この「社会に出たあとに伸びる人材」を育成するための安渕さんの人材育成論と、それをどう子育てに応用できるかということです。

安渕 よく聞かれるのが、「リーダーって育てられるんですか?」という質問なんです。もちろん我々は育てられると思っていますが、ただし教育をして育つとは思っていません。大事なのは、その人がリーダーに育つための環境、機会があること。そして本人がリーダーシップをとって伸びていきたいと思うこと。我々の仕事は、そういった環境、機会を提供し、本人の思いが目覚めるサポートをすることなんです。

 子どもも一緒で、親が1から100までお膳立てしても、リーダーには絶対育ちません。ですから私が父親として気を付けていたのは、“小さいときから一人前として扱うこと”でした。「何がしたいの?」といちいち聞き、自分で決めさせるんです。

ムーギー まさに本書の第一章が、「『主体性』を最大限に伸ばす」という項目なんです。というのもアンケート回答で一番集中していた答えが、安渕さんがいままさにおっしゃったように、「親に一番感謝しているのが、子どものときから自分で決めさせてくれたこと」というものだったからです。

 ただし彼らは放っておかれたわけじゃなくて、サポートはいっぱいもらったと言っています。情報はいろいろ教えてくれるんだけど、最後の決定は自分で下させてくれた、それがモチベーションになって頑張れた、という人が本書に掲載している「一流の育て方アンケート」への回答の中に、非常に多かったんですよ。

安渕 私自身も、小さいころから、つねに意見を聞いてくれたり、一人前に扱ってもらったという意識があります。強く覚えているのは、小学校2、3年生ぐらいのときにケネディ暗殺事件があって、その話を親としたんですよね。私が「ケネディが暗殺されたよ」と新聞の号外を持って行ったら、そこで親はケネディがどういう人か丁寧に説明してくれたうえで、私がどう思うか聞いてくれたんです。

 あと、私は本好きだったんですが、「これを読みたい」と言うと、望むだけ買ってくれた。そんなことも、自分という存在を尊重してもらっているなと感じましたね。