聖フランシスコは12世紀、イタリアのアッシジに生まれました。裕福な商人の息子として、何不自由ない子ども時代を送りましたが、成人した頃に隣町との間に戦争が起こりました。

 彼は友人らと一緒に戦争に送り出され、重傷を負って家に帰ってきました。生死も危ぶまれたのですが、なんとか命を失わずにすみました。

 もしかして臨死体験をしたのでしょうか、彼は傷が癒えたとき、まったく違う人間になっていました。自然の素晴らしさに感動し、鳥たちのさえずりに心を奪われ、神の恩寵に気づいたのです。それとともに、人々の間の不公平にも気づきました。自分だけが裕福に暮らし、多くの人々が貧しさに苦しんでいる様子に我慢できなくなったのです。そして、父親の店の商品を人々に投げ与え始めました。

 父親は怒ってそれをやめさせようとしたのですが、フランシスコは父の言いつけを拒否して、自分が着ている服さえも脱ぎ捨てて、父親との縁を切ると宣言し、世を捨てたのでした。

 彼はアッシジの町外れにうち捨てられた古い教会堂、サン・ダミアーノで、古いイエス像に出会いました。そのイエス像は彼に、神とともにいることの大切さと、当時の教会の考え方ややり方が間違っていること、清貧こそが聖者の生きる道であることを教えました。

 そしてフランシスコは、その古い教会を一人で修復し始めたのでした。一つひとつ、崩れた石を拾い集めては壁をつくっていきました。暑い日も寒い日も、彼は黙々と働きました。最初は彼を馬鹿にしていた古い友人たちもその姿に引きつけられ、仲間が増えていきました。

 こうした彼の行動は多くの人々に感銘を与え、キリストの教えをより深く考えさせるきっかけをつくったのです。

 今もアッシジにはサン・ダミアーノ教会やポルチウンクラと呼ばれる小さな会堂が残っています。そして彼の思いと祈りを私たちに伝えています。