優秀なエリートには共通点がある。彼らは「真面目に、我慢して、一生懸命」ではなく、「ラクして速く」をモットーに、効率よく結果を出し続けている。まじめさと仕事のパフォーマンスは比例しない。24年間で5万人以上のクビ切りを手伝い、その一方で、6000人を超えるリーダー・幹部社員を選出してきた松本利明氏の新刊、『「ラクして速い」が一番すごい』から、内容の一部を特別公開する(構成:中村明博)
100点ではなく、
「60点の出来」で出す3つのメリットとは?
「神は細部に宿る」と言います。
一発で仕事を通そうと思えば、より完璧に仕上げたいという気持ちがわくものです。誤字脱字や数値のミスが1つでもあると、資料はもちろん、提案内容への信頼も薄れてしまいます。
しかし大事なことは「誤字脱字もなく、資料が完璧」とほめられることではありません。速く確実に仕上げて通すことです。
最初に確認するのは「納期・品質・用途」といった相手の期待値。
「会議で発表する資料を全部つくってほしいのか、考えを整理するためのたたき台をつくってほしいのか、エクセルで表とグラフだけつくってほしいのか」
仕事の依頼者にしっかり確認しましょう。最初から100点を目指すのではなく、あえて60点で出し、どんどんフィードバックをもらいましょう。60点で出すメリットは3つあります。
(1)方向性を確認できる
ある程度仕事を進めたら、相手に方向性や内容を確認してもらいましょう。やり直しのリスクを減らすことができます。しかしストレートに「60点の出来です」と言ってしまうと、「ちゃんと仕上げたものを持って来い」と突き返されてしまうでしょう。
ではどうするか。調査・分析であれば「速報」、書類であれば「ドラフト」という形にするのです。これなら必ず見てもらえます。要所をしっかり確認しましょう。
(2)相手に突っ込ませて、ゴールを明確にする
依頼者が最終形をイメージできないときは、「60点」での提出が効果的です。
依頼者が常に正解を持っているとは限りません。形さえあれば突っ込むことはできるもの。依頼者の状況を想定し、仮説でもいいので「こんな目的と内容でよろしいでしょうか?」と質問します。
「60点の出来」でも、相手の立場で真剣に考えた質問や提案は、相手の思考を刺激します。あえて相手に突っ込ませることによって、依頼者のイメージがどんどん固まっていきます。
「このやりとりを3回続ければ、相手は断る理由をなくす」とは、三井物産の元副社長、池田正雄氏の言葉です。6000人を超える優秀なリーダーにインタビューしてきましたが、ほぼ全員が同じことを言っていました。